研究課題/領域番号 |
16H03519
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
池口 明子 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (20387905)
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研究分担者 |
前田 洋介 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (10646699)
田和 正孝 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217210)
吉田 国光 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (70599703)
服部 亜由未 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (70708370)
横山 貴史 立正大学, 地球環境科学部, 助教 (70710151)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境ガバナンス / 社会ネットワーク / 漁村 / 漁協 / 津波 / 磯焼け / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本年度は,8月29日から9月1日に北海道小樽市および積丹半島で合同調査と研究会をおこなった.本地域は,近代期にニシン漁の資源移動にともなう漁業制度の大きな変化があった地域である.研究会では,成果発表に向けた枠組みについて話し合った.10月22-25日にはタイ・チェンマイで開催された世界小規模漁業学会に池口・横山・崎田の3名が出席し,事例研究を報告した.またメキシコ,チリの研究者と打ち合わせをおこない,次年度の共同ワークショップについて協議した.2月,3月には池口・前田・横山が,岩手県の広田湾,長崎県の宇久島で合同調査をおこない,津波被災地と磯焼け地域の漁業ガバナンスについて比較考察した.3月21日には日本地理学会春季大会にてシンポジウム「変動する沿岸漁場と順応的環境ガバナンス」を開催し,地理学者や水産政策研究者にコメントをもらって,成果とりまとめの方向性や課題を検討した.このほか,各自が現地調査および理論研究をおこなった.具体的には,1)ニシン減少期のニシン漁家日記出版に向け,原本確認をおこなった.地方紙からニシン漁業関連記事を抽出し,秋田県のニシン漁獲地域がニシン輸入地域,出稼ぎ者送出地域へ変化する過程を検討した.2)小規模漁業の生態誌的研究としては,兵庫県の延縄漁業について研究を続け,特に明石市内の複数の漁業協同組合地区においてかつて延縄漁業に従事した経験のある漁業者から聞き取り調査を実施した.また、明治期に刊行された『兵庫県漁業慣行録』に記された各地の延縄漁業を分析することを試みた.3)水産資源をめぐる諸課題のうち,とくに漁場利用をめぐる主体間関係を読み解く枠組みとして使用される社会ネットワーク,社会関係資本,「スケール」に関する研究動向を整理することで,地理学的にどのような方法論が可能となるのかを展望した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は日本の村落地域のコミュニティガバナンス,およびコモンズ研究のレビューをすすめ,日本海・三陸海岸・瀬戸内海・五島列島でガバナンスの実証研究をおこなうなど,精力的に調査研究をおこなった.その結果,順応的ガバナンスの実態,その地域条件として重要なスケール,コミュニティ,知識,市場との関係性が明らかになり,これをシンポジウムで検討できたことは大きな成果となった.一方で,メキシコ・チリにおける実験的な調査は達成できなかったため,来年度にワークショップと同時におこなうこととした.
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今後の研究の推進方策 |
1)シンポジウムの成果をプロシーディングとして英文著書にまとめ,国際的な評価を問う. 2)7月にペルー・リマでおこなわれる国際コモンズ学会において成果を報告し,国際的な評価を問う. 3)国際コモンズ学会のための南米訪問に合わせてチリで現地研究者と合同調査,ワークショップをおこない今後の課題を検討する. 4)各自の事例地域で補足的調査をおこない論文執筆をすすめる.
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