研究課題/領域番号 |
16H03523
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
筒井 一伸 鳥取大学, 地域学部, 教授 (50379616)
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研究分担者 |
山神 達也 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (00399750)
木村 義成 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (20570641)
佐久間 康富 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (30367023)
立見 淳哉 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 准教授 (50422762)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 農村地理学 / 地域政策 / 地域計画 / 田園回帰 |
研究実績の概要 |
(1)人口フローの把握については,山神を中心に平成の合併前の旧市町村を分析単位として,県単位での人口推移の空間構造を把握し,人口変化の点から田園回帰の位置づけの検討を進めた。(2)田園回帰の主体把握についてはNPO法人ふるさと回帰支援センターにおけるアンケート調査結果を検討し,首都圏出身者と地方出身者とで農山村への移住傾向に差異が見られ始めていることを明らかにした。(3)GISによる既存の環境の見える化については昨年度同様に進めている。(4)コミュニティ空間の変容分析については山形県鶴岡市などで継続的に現地調査を重ねた。 (5)生産空間の変容分析に関連して,研究協力者の嵩と筒井が『イナカをツクル』を,筒井が日本農業新聞の記者と共同で行った調査結果をもとに知見をまとめた『移住者による継業』を,それぞれ書籍刊行をした。また「社会連帯経済」のフランス調査を立見と筒井とで9月に実施した。特にオードフランス州アンブリクールにおけるEnerg'ethicの調査は現地のマスコミにも注目をされ,9月17日付の地元紙La Voix du Nord(ノールの声)でもその様子が紹介された。 (6)居住空間の変容分析については佐久間を中心に移住者受け入れの観点から捉える空き家再生と地域社会の受け入れ体制について検討をすすめた。(7)GISによる3つの空間の統合的把握については主担当を予定していた木村の事情で次年度に行うこととした。(8)農山村空間の変容実態に基づく内発力の検討についても議論を開始し,『「居住空間(すまい)の発展」,「生産空間(なりわい)の発展」を支える「コミュニティ空間」』と『「居住空間(すまい)の発展」,「生産空間(なりわい)の発展」がもたらす「コミュニティ空間の発展」』の循環から内発力を見出すことを検討している。 なおメンバーによる研究集会は大阪(8月),兵庫(3月)と2回開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,昨年度の発行予定を6か月間延長したうえで「地域資源を活用したしごとづくり」にもクローズアップをして出版した『イナカをツクル』のほか『移住者による継業』や各種学術論文などこれまで3年間の成果を順調に公表できた。また申請当初の研究計画にはなかった「社会連帯経済」と田園回帰との関係についてより綿密に検討を行うため,フランスでの調査を実施した。その結果はいくつかの成果として取りまとめを進めている一方,フランスオードフランス州での田園回帰に関する社会の関心など日本国内にとどまらない,本研究の一般性を認識するに至った。その関係もあり,本研究を基研究課題として,国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))に「過疎発現下のモンスーンアジアにおけるネオ内発的発展の可能性」の研究計画が採択された。そのことも意識をした農山村空間の変容実態に基づく内発力の検討も進めることができた。なおGISを用いた既存の環境の見える化やGISによる3つの空間の統合的把握については主担当を予定していた研究分担者の事情で遅れ気味であるため,最終年度に向けて進行を早める努力を行う。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度に当たるため,この間の研究で新たな研究課題が確認された点や進捗が多少遅れ気味な点に関して重点的に進める。特に(3)GIS による既存の環境の見える化と(7)GIS による3つの空間の統合はその方針を研究分担者と改めて確認をするとともに,コミュニティ,生産,居住のそれぞれの空間を統合した農山村空間の再現を目指す。また(5)生産空間の変容分析では田園回帰による移住者のあらたななりわいが,小地域の産業構造にどう影響を及ぼしているのかを,(6)居住空間の変容分析では田園回帰による移住者の住居とその立地状況などの検討を行う また,日本型ネオ内発的発展モデルの構築をめざし,議論を重ねる。最終的な研究成果の公表は事例地域でのワークショップやワーキングペーパーなどを用いた調査結果の公表も検討する。さらに採択された国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))「過疎発現下のモンスーンアジア農村におけるネオ内発的発展の可能性」を2020年度に展開する予定であり,それへの接続も意識した議論をスタートさせる。
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