研究課題
応募者は、平成25~27年度科研費の研究成果として「全国小地域別将来人口推計システム」の日本語版と英語版をウェブ上に公開した。同システムは、当初、日本の地方自治体の業務支援を主目的として開発したものであったが、公開後に世界各国から反響がありその有用性と発展性を再認識するに至った。そこで本研究は、同システムの設計の過程で得られた種々のノウハウを米国、豪州、台湾のセンサスデータに適用することによって、これらの国・地域ごとに「小地域別将来人口推計システム」を構築し、その成果を同システムにフィードバックしてその精度を向上させることを第一義的な目的とする。平成28年度から29年度にかけて米国に関する小地域別将来人口推計システムを開発する。応募者は平成28年9月より,本務校より1年間の在外研究の許可を得てこの課題に取り組んでいる。この開発については当初全米を対象に行う予定であったが,州によって小地域人口の整備状況が全く異なり,統一的なアプローチがきわめて困難であることが分かった。そのため,まずはワシントン州でのシステム構築をめざしそこで米国における小地域推計のノウハウを得ることにした。幸いなことに,ワシントン州は全米の中でもとくに小地域人口統計の整備に積極的な州であり,当初予定していたセンサス間の補間推定が不必要であることも分かった。そのため,29年度後半に予定していたシステム公開を前倒しし,29年度前半に行うこととした。平成28年度は,上述したワシントン州でのシステム開発に注力し,そのための新しい手法を開発した。その一つである二段階平滑化法two-step smoothing methodについては,29年1月に米国の国際学会で発表を行った。また,米国の小地域人口推計に必須であるgroup quarters populationに関する新しい手法についても検討を重ねた。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた全米でのシステム開発は現時点では現実的でないことが判明した。そのため,当面ワシントン州の開発を専攻させることにしたが,「研究実績での概要」に示したように,ワシントン州の小地域人口統計が充実しているため,当初見込みよりも早くシステム公開ができる見通しである。以上の点から,本研究の課題はおおむね順調に進展していると判断した。
「研究実績の概要」で述べた通り,当面,ワシントン州の小地域別将来人口推計の開発に注力する予定である。二段階平滑化法については実際の推計への応用が確認できたので,今後は,まずは施設入居者人口group quarters populationに関する新しい推計手法の確立をめざしてシミュレーションを行う予定である。この人口の推計は米国の小地域別将来人口推計を行う際のもっとも課題の多い部分であると同時に,この方法が確立されれば米国以外の国への応用が期待できる。この方法の確立後に,ワシントン州のシステム開発の作業に移行し,その成果を6月にワシントン州シアトルで開催される国際人口地理学会,ならびに7月にカリフォルニア州サンディエゴで開催されるエスリユーザ会にて発表する予定である。平成28年9月に日本に帰国後は,このシステムの更新ならびに台湾とオーストラリアにおけるシステム開発の準備に取り掛かる予定である。
上述の2つのwebページのコンテンツは同一である。上段が日本語版,下段が英語版である。英語版のタイトルはThe Web System of Small Area Population Projection for the Whole Japanである。上述のタイトル欄には文字数の上限を超えてしまい表記できないのでここに記述した。
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Working Paper Series, Institute of Economic Research
巻: 2017-1 ページ: 1-12
http://arcg.is/1LqC6qN
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