今年度は、大きく分けて次の3つの研究を行った。 一つ目は、「全国小地域別将来人口推計システム」の大規模更新である。このシステムは2016年にver.1.0が公開されたが、このバージョンでは2005年と2010年の小地域別人口統計を用いて2015~2060年の将来推計を行った。しかし、その後、2015年の小地域別人口統計がe-Stat上で利用可能となったため、2010年と2015年の小地域別人口統計を用いて2020~2065年の将来推計を行い、その結果を上記システムに反映させた。これにより上記システムの日本語版と英語版のver.3.0を公開することとなった。この更新では、新たな推計方法を取り入れるなどすべての計算過程をゼロベースで見直した。 二つ目は、台湾を対象とするThe Web Mapping System of Small Area Population Projections for Taiwanを公開した点である。このシステムの公開にあたっては、「全国小地域別将来人口推計システム」の作成の過程で得られたノウハウを応用して、種々の数値計算を行った。結果として、台湾で初めて、小地域別の長期の推計結果をウェブマッピングシステムとして公開することとなった。 三つ目は、オーストラリアを対象とする小地域別将来人口推計の準備を進めた点である。当初はオーストラリアについても推計結果をウェブマッピングシステムとして公開する予定であったが、同国で得られる小地域別将来人口統計にはランダム化による秘匿処理が施されているため、これまでの方法では推計が不可能であることが分かった。そのため、同国における推計とシステム公開については、新たに採択された科学研究費助成事業による研究にて引き続き取り組むこととした。
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