研究課題/領域番号 |
16H03526
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
箸本 健二 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10269607)
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研究分担者 |
佐藤 正志 静岡大学, 教育学部, 准教授 (00599912)
菊池 慶之 島根大学, 法文学部, 准教授 (20367014)
久木元 美琴 大分大学, 経済学部, 准教授 (20599914)
駒木 伸比古 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (60601044)
武者 忠彦 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (70432177)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 事業用ストック / 低未利用不動産 / 地方都市 / 都市再生 |
研究実績の概要 |
本年度は,地方都市における低未利用不動産の利活用実態について,文献の整理を行った。その上で,地方都市で高い実現可能性が期待される1)不動産証券化,2)既存建築物のリノベーション,3)福祉目的利用の3手法についてパイロットスタディを実施した。併せて,地方自治体の政策的対応について事例研究を行うとともに,定量的な評価に向けたGIS(地理情報システム)データベースを構築した。 1)の不動産証券化については,地方都市における不動産証券化の事例を収集し,そのフレームワーク整理を行い,特徴的な事例の実査を行った。また2001年から2013年における不動産証券化事例を整理し,地域別,用途別の特徴を整理した。 2)のリノベーションによる都市再生については,長野市門前エリアでの調査をもとに,リノベーション物件入居者は9割がUIJターン者であり,その多くが大都市圏で創造的な仕事を経験していること,子育て世帯を中心に仕事は中心市街地,生活や娯楽は郊外と,生活空間が二重構造となっていること,リノベーションのパターンは既存建築物の用途や床面積で異なり,現用途には経路依存性があることを明らかにした。 3)の福祉目的利用については,商店街空き店舗やビルの一室などを認可保育所(地域型保育給付)として利用できる新制度の動向について調査を行った。その結果,再開発等の影響で都市内部において保育所待機児童が偏在している事例があること,選択できるサービス内容に偏りがあることなどを示した。 中心市街地に対する政策的対応では,苫小牧市を事例に不動産所有や執政機関における政策立案や運営について検討した。また,中心市街地活性化基本計画に認定された141都市を対象として,中心市街地活性化区域を示すGISデータを作成するとともに,豊橋市を対象として,中心市街地における1961年と2016年現在の土地・建物利用調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における初年度(平成28年度)の到達目標は,地方都市が低未利用不動産の利活用を行う上で,実現可能性が高い手法を絞り込むとともに,おのおのの手法が持つ長短所と先行事例(都市)を精査することにあった。初年度における研究実績は,研究実績の概要に記載の通り,頭書の目的にほぼ到達したと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(平成28年度)の基礎研究結果をふまえ,本研究における利活用プラットフォームを,①不動産証券化を軸とする投資リスクの分散,②建物の延床面積縮小(ダウンサイジング),③既存建築物の再利用(リノベーション・コンバージョン)の3カテゴリーに絞り,以下の(1)~(5)のサブテーマ毎に研究を進める。(1).投資リスクの分散を実現するためのフレームワークの一般化:投資リスクの分散を実現する道筋のうち,実現可能性が高い①公的出資+αと地権者でリスク負担(公的出資に比重),②地権者と公的出資+αでリスク負担(地権者に比重)について事例分析を重ね,フレームワークの構築を行う。 (2).商業施設におけるダウンサイジング型再開発手法の精査:具体的な商業施設における開発事例の分析を通じて,地権者間の合意形成,公的資金の導入を含む資金調達,行政による利害調整など,開発のボトルネックとなりやすい諸課題の解決手法を精査する。 (3).面的なリノベーション整備の条件と地域への影響に関する検討:面的なリノベーション事業が進む地域を取り上げ,担い手となる人材や定住人口の推移に着目した実査を進めるとともに,子育て支援施設など地域ニーズが高い施設の導入事例についても検討を進める。 (4).事業用ストックの再生をめぐる行政の対応に関する検討:経済活動の縮退に直面する多くの地方都市では,事業用ストックの再生は民間主体では解決困難な障壁に直面しがちであり,その解決を地方自治体の調整に委ねるケースも多い。このため,事業用ストックの利活用をめぐって地方自治体が果たす役割について検討する。 (5).上記(1)~(4)の調査・分析で得られた知見の一般化を図るため,一定の基準で抽出した地方都市へのアンケート調査を実施する。また,その結果を都市規模,中心市街地面積,中心市街地人口など定量的な指標をふまえて評価する。
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