研究課題/領域番号 |
16H03533
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
関根 康正 関西学院大学, 社会学部, 教授 (40108197)
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研究分担者 |
鈴木 晋介 茨城キリスト教大学, 文学部, 助教 (30573175)
根本 達 筑波大学, 人文社会系, 助教 (40575734)
志賀 浄邦 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (60440872)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アンベードカル / 当事者 / ブッダとそのダンマ / 仏教改宗運動史資料 / 日常宗教実践 |
研究実績の概要 |
関根は代表として第5回B. R. アンベードカル及びエンゲイジド・ブッディズム研究会(2017年1月)を主宰し、各自が研究の経過報告を行い意見交換した。具体的には関根が「ケガレとストリートから見た『不可触民』の現実への関わり・その1」、志賀は「第60回(2016)アンベードカル博士入滅記念日現地調査報告」、根本は「如何に被差別の当事者となり得るのか?」、鈴木は「2017年ナーグプル調査リサーチプロポーザル」について発表した。また関根を中心に関西学院大学出版会から2016年8月に『社会苦に挑む南アジアの仏教』を出版した。 志賀はアンベードカルの主著である『ブッダのそのダンマ』のテキスト研究と被差別民解放運動に関するフィールド調査を実施した。テキスト研究については『ブッダとそのダンマ』のうち主に仏教思想に関する第3部と第4部の一部の読解を進めた。また 2016年12月にインド・ムンバイー市を訪れ、同月6日前後に開催されたアンベードカル入滅記念式典の現地調査を行った。 根本は佐々井秀嶺師が所蔵する膨大な仏教改宗運動史資料を日本に運搬し、デジタルアーカイブ化する作業を行なった。具体的には2016年11月~12月にドキュメンタリー映像作家の小林三旅氏とインド・デリーを訪問し、佐々井師書庫に保存されている資料を分類した。関根と根本はこの資料のうち32箱を日本に輸送した。またデリー滞在中には佐々井師へのインタビューを実施した。 鈴木はインド仏教徒のグローバル・ネットワークと日常宗教実践に関するデータ収集を目的にインド・ナーグプル市にて予備的な現地調査を実施した(2017年2月~3月)。現地ではとくにインド仏教徒活動家との面談を通じて、隣国スリランカへの仏道修行のネットワークの存在が明らかになり、予備調査における大きな成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
関根を中心に本プロジェクトの基本的問題意識を出版のかたちで表明できた。関根が主宰した研究会と各自の現地調査を通じて、ガーンディーとアンベードカルの不可触民差別に対するアプローチを参照しながら、被差別者の当事者性と差別問題を外部から考える研究者の当事者性がどのように交差しうるのかを考察することができた。 志賀は、担当するアンベードカル関連のテキスト研究として『ブッダとそのダンマ』の第3部「ブッダは何を教えたか」と第4部「宗教とダンマ」の解読を進めている。読解・翻訳・引用ソースの同定等の作業に多少多く時間を要しているが、着実に仕事は達成されている。フィールド調査については、アンベードカル入滅記念式典への参与観察を通じてインド仏教徒の最新の動向を把握するなど、当初の予定以上の成果が得られた。 根本はデリーで佐々井師書庫に所蔵された仏教改宗運動史資料(佐々井師直筆の日記や手紙、写真・映像資料等)を分類し、その大半を日本に輸送することができた。これにより2017年度以降に本格的に実施するデジタルアーカイブ化と資料分析への準備が整った。これらの資料を踏まえ、佐々井師へのインタビューを実施した。これにより1967年から現在の仏教復興運動における佐々井師と仏教徒の関係性について学び、佐々井師が如何に被差別の当事者性を獲得してきたのか明確になってきた。 鈴木は現地予備調査の限られた日数のなかで、佐々井師との面談、元不可触民居住区にある在家仏教徒の家庭訪問、改宗広場などのナーグプル市中の主要宗教施設への訪問、活動家の集会への参加等を効率よく行うことができた。これらの調査を通じて今回の主眼であった仏教徒のグローバル・ネットワーク(インド仏教徒とスリランカやタイの仏教徒の繋がりなど)に関する情報収集に大きな進展をみた。
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今後の研究の推進方策 |
関根は2016年度の成果を踏まえ、インドのチェンナイ市とナーグプル市に加え、英国のロンドンでThe Federation of Ambedkarite & Buddhist Organisations UKの活動を実見していくことを目指す。同時にそうしたアンベードカル支持者の運動をカースト・ヒンドゥーの人たちがどのように受け止めているかを調査検討していく。また第6回B. R. アンベードカル及びエンゲイジド・ブッディズム研究会(2017年4月)を皮切りに数度の研究会を主宰する予定である。 志賀の担当するアンベードカル関連のテキスト研究については、読解及び翻訳の方法論も徐々に確立されつつある。このため今後はより円滑に調査・研究を進めていくことができる。『ブッダとそのダンマ』におけるパーリ語経典等の引用ソースの同定についても、電子テキストによる用語検索等により、今後より正確かつ効率的に行うことができると予想される。 根本は2017年9月にデリー、プネー市、ナーグプル市で現地調査を行なう。デリーでは佐々井師保存資料の残りを整理し日本に輸送する。次にプネー市ではSurvey of Indiaを訪問し最新の地図などの資料を収集する。またナーグプル市では佐々井師の仏教寺院に保管されている資料を分類し日本に輸送する準備を行なう。これと同時並行でデリー、プネー市、ナーグプル市在住の仏教徒(元不可触民)へのインタビュー調査と2017年9月30日にナーグプル市で開催される改宗記念祭で参与観察を行なう。 鈴木は2016年度の成果をふまえ、インド仏教徒のグローバル・ネットワークの詳細を把握するためのフィールドワークを継続する。2017年度はスリランカに調査地を拡大し、同国の仏教寺院で修行するインド仏教徒へのインタビュー調査を主柱として2018年2月~3月のフィールドワークを実施する。
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