研究課題
最終年度は、研究のとりまとめにかかった。イスラーム圏における生殖補助医療に関する規律の仕方の特徴は、国家法による規律密度が低く、代わりにイスラーム法学者が発するファトワー(法意見)に基づく宗教規範によるところにあることが確認された。ファトワーの遵守という「法行動」はもっぱら個人の「良心」によっており、そこに国家による強制に相当するような法的拘束力も統一性もない。かかる個人の「良心」は、イスラーム法にしたがっているという正統性、イスラーム共同体内の善き構成員として期待される振る舞い、個人の自由(欲望)の相互作用の中から選択されていることが明らかとなった。イスラーム圏における生殖補助医療は、依然として、主として、医療専門家ではなく宗教学者によって論じられていることも確認された。そこにおける論点は、当該生殖補助医療が、イスラーム法で認められるか否かである。生殖補助医療のなかでも、第三者の配偶子(精子・卵子)・胚の利用および代理母は、イスラーム法では姦通となり禁止されているというのがスンニ派イスラーム法学者の通説である。他方で、シーア派の法学者の一部は、シーア派独自のムトア婚(一時婚)を論拠に第三者配偶子・胚の利用や代理母を合法と認めている。イスラーム圏のなかで、シーア派が多数派を占めるイランは、唯一、第三者配偶子・胚の利用を国家法で認めている国である。もっとも、スンナ派が一致して第三者生殖をイスラーム法に違反するとみなすのに対して、シーア派の見解は分かれており、例えばイラクにおけるシーア派の最高権威に位置付けられているシスターニ師は第三者生殖を禁止する見解を示している。近年急速に発達している医療ツーリズムは、イスラーム圏においても増加傾向にある。イスラーム圏における生殖補助医療を目的とした医療ツーリズムの主な拠点は、ドバイおよびトルコであること、その動機が明らかとなった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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イスラム思想研究
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比較宗教思想研究
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論究ジュリスト
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フッサール研究
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中東研究
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中東協力センターニュース
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