本研究は、「社会的排除」と呼ばれる問題現象に着目することにより、これまで十分に意識されていなかった権利剥奪のプロセスの中に憲法上保障された基本的人権の侵害を認定できる問題発見枠組を開発し、それに対応した権利保障システムの構築を目指すものである。そのために、多くの法システムで採用される間接差別禁止の体系的位置と射程の比較研究を行い、排除過程の中に差別的要素等を認定できる枠組みを探求し、もって、自由権と社会権との接合方法に関する知見を進化させることが企図されている。 2017年度は、本課題の共同研究成果として前年度に刊行された浅倉むつ子・西原博史編『平等権と社会的排除-人権と差別禁止法理の過去・現在・未来』(成文堂、2017年)に取りまとめられた比較対象国の理論動向に関する理解を踏まえ、比較法的分析を行う際に共通に意識される分析視角の一層の精緻化を図るとともに、それを前提に、普遍的法理論に取り込み得る要素の識別基準を抽出すべく、検討を開始した。具体的には2017年8月と2018年1月に実施された研究会及び共同研究者それぞれの研究活動を通じて、上記の成果を手掛かりとし、共同研究者に共有された理論的視点の通用可能性に関する吟味を深め、日本法に受容可能な規範的要素を識別する試みに向けた作業が行われた(成果については下記の業績リスト参照)。
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