研究課題/領域番号 |
16H03552
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
川島 富士雄 神戸大学, 法学研究科, 教授 (80234061)
|
研究分担者 |
武田 邦宣 大阪大学, 法学研究科, 教授 (00305674)
伊藤 一頼 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (00405143)
川瀬 剛志 上智大学, 法学部, 教授 (60275302)
玉田 大 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60362563)
東條 吉純 立教大学, 法学部, 教授 (70277739)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 国際経済法 / 競争中立性 / 国有企業 / TPP / WTO / 競争法 / 独占禁止法 |
研究実績の概要 |
2018年3月8日の「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定」(以下「CPTPP協定」という。)の署名及び同年12月30日の同協定発効を受け、本研究もより大きな実務的意義を有する段階に達した。2018年度は、国際経済法グループ(貿易サブグループ)は、中国・過剰生産能力問題に対するWTO補助金協定による規律の可能性や米国通商拡大法232条や貿易救済措置による対応、CPTPPの国有企業章や他の自由貿易協定の国有企業章や補助金章との比較、米中通商摩擦、WTO紛争解決手続の最新課題等に関する研究を進め、内外の学会等(日本、中国)で研究報告し、研究論文を公表した。また、同グループ(投資サブグループ)は、TPP・投資章等を中心に研究を進め、研究発表し、研究論文を公表した。国内法グループは、中国の独占禁止法運用と競争政策の動向、企業結合規制、郵便サービスに関する規制に関する研究を進め、国内の学会等で研究報告し、研究論文を公表した。特に、国有企業規律に関しては、2018年10~11月に合意・署名された米国・メキシコ・カナダ協定(以下「USMCA」という。)が、CPTPP国有企業章を土台により厳格な規定を設けていることを把握したことで、CPTPPの規律の特徴や限界が明らかとなった。CPTPP投資章等に関しては、特に国有企業の行為の国家責任への帰属問題(attribution)を中心に、解釈の現状と課題を明らかにした。これらの成果は、神戸大学において中国及びベトナムの研究者も招聘して開催した国際ワークショップの場や研究代表者・川島が中国における一帯一路モデル協定作成プロジェクトに参加すること等を通じ、対外的に発信しつつある。中国の独禁法運用については、研究代表者・川島が『公正取引』誌に2018年12月まで、連載論文を掲載し、同法の運用と競争政策の動向を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年1月のトランプ政権のTPP協定離脱通告により、当初の12か国でのTPP協定の発効の見通しが立たない状態が継続している一方で、2018年3月8日のCPTPP協定の署名及び同年12月30日の同協定発効を受け、本研究もより大きな実務的意義を有する段階に達した。この間、各研究グループにより、CPTPP・国有企業章、同投資章、米中通商摩擦、独占禁止法と競争政策の動向等に関し、内外の学会で研究報告を行い、研究論文を公表した。また、2018年6月、神戸大学において中国及びベトナムの研究者も招聘して開催した国際ワークショップでの報告論文を中心に、本研究の成果を世に問うべく、2018年度後半から国有企業規律に関する英語での書籍の出版計画を進行中であり、本年度中に刊行される見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年6月、神戸大学において中国及びベトナムの研究者も招聘して開催した国際ワークショップでの報告論文を中心に、本研究の成果を世に問うべく、2018年度後半から国有企業規律に関する英語での書籍の出版計画を進行中であり、本年度中に刊行される見込みである。また、研究代表者・川島及び研究分担者・川瀬が主編者を務め、他の研究分担者も執筆陣に参加して、『コンメンタールCPTPP協定』(仮)の出版計画を進行中であり、これも本年度中に刊行される見込みである。今年度はUSMCA批准や米中協議の結果、国有企業と民間企業の間の競争中立性に関する新たな規律が導入されるかどうか注視するとともに、CPTPP国有企業規律の解釈論上の課題や同規律が取りこぼした課題に関する研究を継続する。年度後半は、研究成果を総括し、重要な動向に対応するシンポジウム(神戸大学予定)を開催する、国内外の研究者及び実務家と意見交換(訪問又は招聘)するなど、研究成果の国内外への発信に努める。研究代表者及び同分担者は、上記の日本語及び英語出版に加え、内外(英語、中国語による発信を含む)での学会発表、講演、学術雑誌論文等の形で同成果を公表する。
|
備考 |
研究代表者の川島は個人ブログを開設し、本研究の成果の社会発信の一環として、中国独占禁止法の最新動向などをタイムリーに紹介している。
|