本研究は、精神障害に罹患した受刑者、精神障害に罹患した触法・犯罪少年、保護観察対象者の処遇制度をどのように構築すべきかについて、比較法的な観点から検討を行った。わが国では、医療観察法が施行され、責任能力に問題のある精神障害者については治療の制度が確立したといえる。しかし、受刑者、収容少年、保護観察対象者に関しては、十分な処遇体制が整備されているとは言い難い。近年、刑務所においては、窃盗癖の治療の問題、女子受刑者の摂食障害の問題、少年施設における発達障害者の問題、保護観察下における治療継続の問題など新たな課題も続出しているのが現状である。そこで、本研究では、受刑者、収容少年、保護観察対象者で、精神障害に罹患している者に対する処遇制度をどのように構築すべきかについて、比較法的検討をも踏まえて、法的モデルを提示することを目的として、研究を行った。 平成30年度は、以上の課題について、研究組織メンバーを中心に、定例の研究会を年5回程度開催し、問題点の最終的な整理・分析を行い、わが国において実現可能な法的モデルの構築に向けた検討を行った。 また、今年度の比較法的検討としては、昨年度研究会メンバーで視察を行った、司法精神医療の先進国であるイギリスのダイバージョン・システムについて、検討を行った。具体的には、視察を行った施設の調査結果および文献資料を研究会で整理・分析し、それを踏まえて、法的・医学的観点から検討・議論を行い、わが国における法的モデル構築の参考とした。
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