研究課題/領域番号 |
16H03564
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森田 果 東北大学, 法学研究科, 教授 (40292817)
|
研究分担者 |
井深 陽子 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (20612279)
日引 聡 東北大学, 経済学研究科, 教授 (30218739)
泉田 信行 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 部長 (70360716)
尾野 嘉邦 東北大学, 法学研究科, 教授 (70598664)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 実証法学 / 経済政策 / 民事法学 / 社会法学 / 公法学 |
研究実績の概要 |
本研究は,解釈論を中心としてきた法学に対し,法を一定の政策目的の実現のためのツールとして位置づけた上で,近時,教育経済学・医療経済学・労働経済学・都市経済学・環境経済学などの分野で発展してきた,データに基づいた政策評価の手法を導入することで,データに基づいた客観的な評価を会社法以外の法学分野にも導入・展開することを目指すものである。初年度である平成28年度は,サーベイやデータ収集を主眼に据える予定だったが,分析結果の伴った研究成果もいくつか公表することができた。 研究代表者森田による本年度の業績は,医療過誤に基づく刑事訴追が医師の供給に深刻な影響を与えることを示した実証分析であり,近時社会的な問題となってきている医師の刑事訴追について,謙抑的な運用を提案するものとなっている。森田にはこのほか,会社法についての実証分析および統計的手法の活用上の注意点に関する検討,および,立法過程についての政治学的な分析についての業績がある。 研究分担者井深には,わが国で現在行われている市町村レベルでのワクチン接種(予防接種)という政策について分析した業績がある。 研究分担者日引には,さまざまな環境問題(気候変動,土壌流出対策,珊瑚礁)に関する実証分析のほか,集合責任(連帯責任)という法ルールがどのようなインプリケーションを持つのかについて理論的に分析した業績がある。 研究分担者尾野は,東日本大震災後の政治家の行動を題材にすることによって政治家の行動を実証的に分析した業績のほか,投票者の行動メカニズムについて実証的に解明する業績や,国会の行動のあり方に関する実証分析,サーベイ実験において「分かりません」という反応をどのように処理すべきかという実証分析における方法論的問題を取り扱った業績がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,解釈論を中心としてきた法学に対し,法を一定の政策目的の実現のためのツールとして位置づけた上で,近時,教育経済学・医療経済学・労働経済学・都市経済学・環境経済学などの分野で発展してきた,データに基づいた政策評価の手法を導入することで,データに基づいた客観的な評価を会社法以外の法学分野にも導入・展開することを目指すものである。具体的には,①エビデンス・ベースの政策評価にあたって必要となるデータセットの構築を行い,②その上で当該データセットに基づいて統計的手法による分析と政策評価を実施することになる。平成28年度は,これらのうち,①の作業を中心に行うとともに,その前段階の準備作業として,先行研究のサーベイや理論モデルの構築を行う計画であった。 ①の作業は,特にデータの収集が難しいわが国においては困難な作業となることが事前に予想されていたにもかかわらず,ほぼ当初の実施計画通りに実施することができている。さらに,データの収集が部分的に早く終わった分野については,②の分析作業を行い,その分析結果――多くは未だ暫定的な結果であるが――を,国際学会などにおいて報告し,多くのフィードバックを得てきている。また,準備作業である,先行研究のサーベイや理論モデルの構築についても,いくつかの分野で実行し,その成果を公表してきている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は,解釈論を中心としてきた法学に対し,法を一定の政策目的の実現のためのツールとして位置づけた上で,近時,教育経済学・医療経済学・労働経済学・都市経済学・環境経済学などの分野で発展してきた,データに基づいた政策評価の手法を導入することで,データに基づいた客観的な評価を会社法以外の法学分野にも導入・展開することを目指すものである。具体的には,①エビデンス・ベースの政策評価にあたって必要となるデータセットの構築を行い,②その上で当該データセットに基づいて統計的手法による分析と政策評価を実施することになる。 これらの作業のうち,①が特に困難な作業であるが,本研究においては,平成28年度において,ほぼ計画通りの進捗を実現することができ,さらには部分的に研究成果の報告を行うこともできた。したがって,今後も,当初の実施計画に沿って,本研究を推進していく予定である。
|