研究課題/領域番号 |
16H03570
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
児矢野 マリ 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90212753)
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研究分担者 |
鶴田 順 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), 国際海洋政策研究センター, 准教授 (90524281)
堀口 健夫 上智大学, 法学部, 教授 (10374175)
伊藤 一頼 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 准教授 (00405143)
島村 健 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (50379492)
久保 はるか 甲南大学, 法学部, 教授 (50403217)
石井 敦 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (30391064)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 持続可能な漁業 / 海洋生物資源の保存と利用 / IUU漁業の規制 / 国際・国内法政策の相互連関 / 条約の国内実施 / 海洋法 / 漁業法 / 環境法 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究体制及び研究基盤を構築し、実証分析作業を開始した。第一に、研究のための施設基盤として、文献収集とデータベース作成、その共有ツールを整備した。第二に、必要な知識の共通理解に努めた。漁業・海洋生物資源の保存と利用の分野は、国際及び日本の法・政策は長い歴史を伴い、近年の顕著な展開により構造も複雑なので、文献調査に加え多様な手法(水産庁担当者や漁協理事・漁業者を招いたセミナー(下記①)やラウンドテーブル対話(下記③)、関係機関のヒヤリング調査等)も駆使し、立体的把握に努めた。第三に、認識枠組を共有し、共通の問題意識を醸成して、研究方法論を検討した。本研究は異なる学問領域(国際法学、行政法学・環境法学、行政学、国際政治学)が関わる学際的研究なので、時間をかけて丁寧に行った。共通文献の読み合わせと討論を重ね、共同研究の土台を作った。第四に、国際法制度・規範の国内実施プロセスにつき、分析の基礎を作り、できるところから実証分析を開始した。既に代表者と一部の分担者が先行科研で開発した分析枠組・ツールをベースに、他の分担者による先行漁業科研で得た知見をインプットし、有効な枠組・指標を検討した。分担による実証分析は、科学的な資源管理とIUU漁業の規制に関する国内編入の分析に加え、受け皿としての日本国内の法規範・統治構造(関連アクターの関与含む)の分析という、2つのアプローチをとった。研究会で中間報告と討論を重ね、多角的分析に努めた。第五に、相対化の視点を得るため、海外の専門家を招いてセミナーを行い(下記④と⑤)、成果の一部を国際学会(ISA)で紹介し海外研究者と交流した(2月23-25日、米国ボルチモア)。繰越期間も含め以下5回の研究会合を開いた。①7月30-31日(東京)、②12月28日(神戸)、③3月29-30日(東京)、④5月18日(東京)、⑤10月7日(神戸)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学際的な共同研究の基盤(必要な知識・概念の共通理解、問題意識・認識枠組の共有、研究方法論の設定)の構築に、当初の予定以上の時間がかかったが、さまざまな手段・方法を工夫して研究目的達成に必要な作業を進めることができた。以上の背景には、法解釈論を中心に規範論を扱う法学と要因分析による動態論を扱う政治学・行政学、また、国際的現象を扱う国際法学・国際政治学と国内的現象を扱う行政法学・行政学との間で、各方法論に起因する基礎概念・認識方法等の差異が顕著であった、という事情がある。しかし、逆にこの作業を丁寧に行うことにより、メンバー間の問題意識・認識の共有が深まり、共同研究の進展に良い影響をもたらした。また、研究の基礎となる現行の国際法制度・規範及び日本の国内法・政策と基礎概念等(長い歴史を伴い、近年の顕著な展開により構造も複雑となり、また科学・技術の要素も多いために全体像の理解は容易ではない。)についても、多様な手法を活用することによりメンバー間で正確な共通理解が進んでいる。さらに、国際法制度・規範の国内実施プロセスにつき、統合的な分析の基礎を作り、できるところから実証分析も開始することができた。その作業は、それぞれのテーマの特徴を踏まえた工夫を織り込みながら進められており、法規範の国内編入については一定の成果も上がりつつある。必要な文献・情報・データの入手も順調であり、国内の実務家・研究者に加え、海外の関係者とのネットワークも構築されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
主に五つの方策を進めていく。第一に、これまでの分担による個別の実証分析作業の成果を受けて、受容(reception)面における条約の国内実施の全体像を記述的に整理する。その際、特徴的な題材を幾つか選定して、事例研究を織り込んでいく。第二に、対外的な中間成果の発表の機会(とりわけ口頭発表)を設定し、ひとまずそれに照準を合わせて、研究会を作業の「ペースメーカー」として活用する。第三に、運用(operation)面における条約の国内実施についての実証分析に関しては、本研究が学際的研究であり研究方法論につき工夫が必要であることから、上記第一を達成するなかで、その進め方等についてより具体的に検討を進める。これを促進するため、行政実務担当者、漁業者、関連NGOとの意見交換等を積極的に継続し、実態把握に努めていく。第四に、相対化の視点からの検討を進めるため、諸外国との比較や他分野との比較といった視点に留意し、そのための方法の検討も含め、準備を進めていく。最後に、国際的な法・政策の最新動向をフォローして研究に組み込んでいくため、関連国際機関の定例会合等における参与観察をできる限り実践していく。
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