研究課題/領域番号 |
16H03574
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研究機関 | 独立行政法人国民生活センター(商品テスト部、教育研修部) |
研究代表者 |
松本 恒雄 独立行政法人国民生活センター(商品テスト部、教育研修部), 国民生活センター, 理事長 (20127715)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 消費者法 / 比較法 / 法政策学・立法学 / 集団的利益 / 集合的利益 / 拡散的利益 / 公私協働 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、6月4日に明治大学で開催された比較法学会第80回総会でのシンポジウムとして、「消費者被害の救済と抑止の手法の多様化」が、研究代表者・連携研究者・研究協力者を報告者として本研究の中間報告の形で行われ、本研究の分析視点を提示するとともに、平成28年度の調査研究を踏まえた各国法の状況について、学会参加者からコメント・質疑を受けた。シンポジウムの各報告は、学会誌「比較法研究」79号に掲載された。 このシンポジウムの準備のために第1回研究会を4月23日に開催し、報告者が各自予稿の概要を報告した。そして、比較法学会シンポジウムを終えて、6月24日に第2回研究会を開催し、シンポジウムの振り返りと夏期以降の現地調査のプランを議論した。 12月3日に第3回研究会を開催し、ドイツについて宗田准教授、アメリカについて籾岡教授、ブラジルについて前田准教授から、現地調査を踏まえた報告が行われた。国際消費者法学会主催の第16回国際消費者法会議が7月にブラジルで開催されたこともあり、他の南米諸国の情報も得られた。 平成30年2月11日には、今年度最後となる第4回研究会を開催し、イギリスについて、菅教授から現地調査及びイギリス法を素材とした近著『新消費者法研究』の概要の報告が行われた。さらに、平成30年11月11日に開催予定の日本消費者法学会シンポジウムにおいて、わが国の消費者法・消費者政策の進むべき方向性を打ち出すための報告課題と分担について意見交換がされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、消費者被害の救済に関する各種の法的手法と被害の抑止に関する各種の法的手法及び両者の相互連携のあり方について、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、ブラジル、中国の6か国を比較法研究の対象として行い、今後のわが国の消費者法・政策の進むべき方向性を提示することを目的としている。 各国の比較は、消費者被害の救済と抑止をどのような法主体がどのような手法によって行っているのか、抑止のために違法行為を行った事業者への金銭的不利益賦課がどのように実現されているのかという観点から行っている。 平成28年度、29年度の調査において、対象となる各国の特徴がかなり明らかになってきている。上記の点において、わが国と比べて、行政が積極的な役割を果たしている国が多いこと、刑事法的な手法が活用されている国があること、懲罰的損害賠償や高額の制裁金等を課している国があること、競争法の観点からの競争当局による被害救済が積極的に行われている国があること、高齢者について行為能力制限とは異なった私法理論で脆弱な消費者保護を実現している国があること、消費者団体訴訟を導入している国においても個々の被害者への金銭配分の手法に違いがあることなどが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、それぞれの対象国の調査を継続するとともに、各国法の研究の中から、日本の法政策にとって参考となる点や欠けている点を抽出し、日本法への導入や接合の方法を検討することに重点を置く。 そして、平成30年11月11日に青山学院大学で開催される日本消費者法学会総会でのシンポジウムにおいて、これまでの比較法研究の成果を踏まえて、論点別にわが国の消費者法・消費者政策の進むべき方向性を打ち出すための報告を行う。取り上げる対象となる論点としては、一般契約法理による脆弱な消費者の保護、消費者団体による集団的被害回復訴訟の二段階目手続と団体維持経費の確保、消費者団体以外による集団的被害回復訴訟、行政処分による集団的消費者被害の回復、行政機関の民事訴訟による被害救済、刑事手続を活用した法執行、懲罰的損害賠償・制裁金などがある。 以上の作業のために、研究代表者、研究協力者等による研究会を3から4回程度開催する。まず、11月の学会シンポの準備のために6月17日に第1回目の研究会を開催する。そこでの議論を踏まえて、7月末までに各自が学会予稿をまとめ、現代消費者法40号に掲載する。また、夏休み等を利用して現地調査を行い、学会シンポでの報告の問題意識を踏まえて、研究者や関係機関からのヒアリングを行う。10月に、現地調査の報告とシンポジウムの最終調整のための第2回研究会を行う。 平成31年1月から3月の間に1ないし2回の研究会を開催し、平成31年度中に論文集の形で成果を出版できるようにつとめる。
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