研究課題/領域番号 |
16H03576
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
高端 正幸 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (50406542)
|
研究分担者 |
近藤 康史 筑波大学, 人文社会系, 教授 (00323238)
西岡 晋 東北大学, 法学研究科, 教授 (20506919)
西山 隆行 成蹊大学, 法学部, 教授 (30388756)
古市 将人 帝京大学, 経済学部, 講師 (50611521)
茂住 政一郎 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 助教 (50757094)
福田 直人 東京大学, 社会科学研究所, 研究員 (50757648)
近藤 正基 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (80511998)
秋朝 礼恵 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (80623454)
千田 航 北海道大学, 法学研究科, センター研究員 (80706747)
佐藤 滋 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (90616492)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 福祉国家 / 社会保障 / 租税負担 / 普遍主義 / 中間層 / 比較政治 / 財政史 |
研究実績の概要 |
戦後の福祉国家発展期における福祉国家的施策の展開と中間層の形成との相互関係、および福祉国家再編期以後のその変化を、財政学と政治学の双方から解明するために、本研究が採用する分析方法の検討を、2度の研究会の開催、および分担研究者個々人における研究作業をつうじて進めた。具体的には次のような成果を得た。
① 第1回研究会(8月)では、「中間層」「普遍主義・選別主義(あるいは社会保障給付の普遍性・選別性)」「福祉国家的施策への支持」といったキー概念について、分析対象国(日本・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・スウェーデン)への適用可能性を慎重に検討し、リサーチ・クエスチョンの精緻化を図った。具体的には、まず国により、あるいは時期により、移民や人種等の諸カテゴリーや労働市場の二重化(dualization)といった要因が「福祉国家的施策への支持」を説明する政治的に重要な要素となりうることを十分に考慮しつつ、「中間層」への着目を本研究の特色として維持することを確認した。 ②「普遍主義・選別主義」という社会保障給付の配分パターンと「福祉国家的施策への支持」との因果関係をめぐる先行研究を意識しつつも、本研究では因果関係そのものより、むしろ先行研究ではしばしば軽視される給付配分パターンの実態・変化の実証的検討、および(税・社会保険料)負担配分と合わせた給付・負担両面での「中間層」と福祉国家的施策との相互関係の把握を図り、それに政治学的説明を与えることを目標として確認した。 ③以上を踏まえ、第2回研究会(12月)では、分析対象6カ国における給付・負担配分のあり方、およびそれを生み出した政治経済的背景について、財政学的観点から問題提起を行い、政治学的観点を交えた討論を行った。その成果を踏まえ、財政学・政治学双方のリサーチ・クエスチョンを明確化した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初計画に掲げた、①先行研究の整理、②基本概念の検討・共有、③分析フレームワークの確定・共有、④(各国分析)福祉国家発展期の分析、の4つの課題に対し、全体としておおむね順調に研究を進展させることができた。各課題についての進捗状況は次のように自己評価することができる。 ①福祉国家(あるいは社会保障政策、再分配政策)への支持の決定要因に関する先行研究を押さえるのみならず、分析対象6カ国の専門家が参加している強みを生かし、各国の歴史的経緯や今日的条件の相違を十分に踏まえ、先行研究の状況に対して実証的な観点から新たな知見を提示するために本研究が採るべき分析視角の具体的な検討を行うことができた。 ②上記「研究実績の概要」で述べたように、「中間層」「福祉国家的施策への支持」といった本研究が採用する基本概念に対して批判的な検討を加えるとともに、それをつうじた分析視角の具体化と共有を進めることができた。 ③分析視角をより明確な分析方法、および分析対象6カ国ごとに設定すべきキー・クエスチョンの確定は、次年度に持ち越さざるをえなかった。ただし、財政学的観点と政治学的観点の間での役割分担や相互関係のあり方についてはスムーズに明確化することに成功しており、次年度以降の研究の順調な進展のための十分な基礎を得ることに成功した。 ④各国分析については、財政学の立場から6カ国のケーススタディを報告し、討議を行うことができた。それを受けての政治学的分析については、来年度早々に実施する研究会で報告・討議を実施することとなっている。 以上のように、一部事項に計画からの遅れが見られたものの、むしろ計画を上回る成果を得た面も多く、総じて本研究はおおむね順調に進展していると評価されてよい。
|
今後の研究の推進方策 |
3カ年計画の2年目にあたる来年度は、本年度検討・共有を進めた分析フレームワークを基礎に置き、各国分析担当者が実施した現地調査の成果を踏まえ、より実証的かつ具体的な事例報告とその批判的考察を進めていく。 そのプロセスにおいて、広義の歴史的制度論に立脚した政治学的観点と、財政社会学的アプローチに基礎をおく財政学的観点との生産的な接合のあり方について、さらなる具体的なイメージを得るとともに、各国分析の比較分析への発展を期する。 以上の作業をつうじて、来年度の終期には、最終的な研究成果の全体像と、その先行研究に照らした意義を明確化する段階まで研究を進展させる。なお、そのためには研究グループ外からのインプットも不可欠であるため、本研究の中間的成果の学会等における積極的な公開を図っていく。
|