研究課題
今年度は本研究の最終年度であるが、米中対立の激化など、地域情勢の変動が当初想定したよりも非常に大きいことから、あえて最終的な研究取りまとめよりも、この研究を進めていくことを前提としたリサーチを継続しつつ、メンバーがそれぞれ適宜研究成果の発表に努めた。今年度は平均して二ヶ月に一度の頻度での全体研究会を開催し、研究打ち合わせ、メンバーの研究発表、招聘研究者との意見交換等を行った。初年度にブルネイ、次年度にカンボジアとあえて中国の影響力がより一層増しており、また生来大国の圧力に弱い小国である国々を選び、現地調査や聞き取り調査を行ってきたが、その方針を継続し、平成29年度はラオスへ出張し、政府関係者や政府系研究機関、大学の研究所での聞き取り調査を行うとともに、ビエンチャン市内、および一帯一路の一環として計画された中国ーラオス高速鉄道のビエンチャン郊外における建設現場などに赴き、視察を行った。ラオスが経済発展を図る上で中国からの支援に頼らざるをえず、現実には中国の影響力が拡大しつつあること、一方でラオスは主権国家としての自立性を確保するということを最重要課題とし、日本の支援を仰ぐなど、中国の影響力を相対化する努力もなされていることを確認した。また、総選挙を直前に控えたタイ・バンコクにおける現地での聞き取り調査も行った。インドシナの大国であるタイは、自国が主導して近隣諸国への支援をする枠組みで支援を行うなど、独自の外交を展開している。中国は現在、一帯一路がもたらすリスクへの各国からの懸念、またアメリカとの対立の深まりに直面する中で、ラオスやタイを始めとするASEAN諸国に対して穏健な態度をとらざるをえなくなっている。本研究は、東アジアで進んでいる地域統合や地域秩序の変容は、こうしたASEAN諸国の多様な動きや大国への対応、それに対する大国の反応によってもたらされていることを確認した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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