研究課題/領域番号 |
16H03596
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
神谷 和也 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (50201439)
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研究分担者 |
小林 創 関西大学, 経済学部, 教授 (10347510)
七條 達弘 大阪府立大学, 経済学研究科, 教授 (40305660)
清水 崇 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (80323468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 貨幣 / 実験 / ダブルオークション / 貨幣の中立性 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、前年度からの継続で、動学的ダブルオークションモデルの実験を行った。動学的ダブルオークションモデルにおいては、定常均衡は無限個(連続無限個)あることが知られている。(Kamiya and Shimizu (2013))このモデルをもとに実験を実施した。実験は関西大学において計8セッション行った。また、各セッションで24人または18人の被験者を使っている。令和元年度は、前年度と同様にセッションごとに異なる総貨幣量を用いる実験と、総貨幣量をセッションの途中で変える実験を行った。どちらの実験でも、平均取引価格、買い手を選ぶ比率、取引が成立したagentの率などに差がないか検証した。前年度と同様の実験では、two-ample t-test, Mann-Whitney test, bootstrap test, two-sample t-testなどを使って検定を行った。新しい実験では、セッション途中で貨幣供給量を変えることにより、inertiaが発生しやすい状況を作った。例えば、貨幣量がセッション途中で増加した場合には、realな貨幣量が増えたと錯覚し、元の貨幣量の場合の行動を引きずる可能性がある。つまり、貨幣量が2倍になれば貨幣価値は2分の1になるはずだが、相変わらず元の貨幣価値を前提にして行動する可能性がある。この種の中立性の実験は、いくつかの貨幣モデルを用いて行われているが、ほとんどの場合、貨幣量を増やした場合には中立性が成立し、減らした場合には中立性が成立しない。しかし、我々の実験では、両方の場合で中立性が成立する傾向がみられた。つまり、貨幣量を減らす場合の非中立性は、モデルの設定に依存しないと考えられてきたが、本研究によりモデルに依存する可能性が示された。この結果は金融政策に関する新しい知見を与えるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成元年度は、8セッションの、動学的ダブルオークションモデルの実験を行うことができた。特に、貨幣供給量をセッション途中で変えることにより金融政策についての実験も行った。この実験により、貨幣の中立性に関する新しい知見も得ることができた。新型コロナウィルスの影響で、いくつかの実験を実施することができなかった。しかし、計画の8割程度の実験を実施できており、おおむね順調に進展している。もちろん、今後は、サンプル数を増やして結果が頑健であることを示す必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、 新型コロナウィルスの影響で、実施することができなかった実験を実施する。また、本年度は最終年度に当たるため、改訂要求がきている投稿中の論文(貨幣サーチモデルの実験論文)を完成し、また貨幣オークションの結果をまとめ論文を完成する。特に、いかなる均衡が実験において選択されているかを明確にしたい。具体的には、agentが貨幣保有そのものにある種の効用を感じているモデル、および買い手の貨幣保有量が異なるモデルで実験結果を説明できるか検討したい。
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