研究実績の概要 |
本研究では,(1)ゲーム構造と相互性発動の関係と(2)ゲーム構造とリスク・不確実性選択の関係の2点を再検討し,戦略的関係とリスク・不確実性選好,さらに社会的選好との相互作用について新たな知見を得ようとするものである。 (1)については,2つの協調ゲームを用い,利害が対立するゲームでも「意図」を顕示できる手続きがゲームに内蔵されていれば,協調が達成され効率的結果がより得られやすくなることを実験で示し,実験経済学領域ではトップレベルの国際学術誌であるExperimental Economicsに掲載されるに至った。(2)については,コロナ禍中の実験実施の制約から,別個の研究プロジェクトにおいてフューチャー・デザインの視点から展開されていた市民討議を介する実験研究で採取された,討議参加者のリスク選好と社会的選好データを用いて,本研究の視点からデータを再解析してみた。並行して主に学生をサンプルとする単独の実験室実験を制約の中でも細々と実施した。これによって、市民討議のフィールドデータと実験室実験データを対比することができる。さらに、ゲーム的戦略的要素がある場面を介した、リスク選好と社会的選好の関係を見るための実験室実験を実施し,両者が密接に連動していることを統計的に示した。これまで困難であった、所得分配に関する社会的選好とリスク選好を実験データから分離することを可能にする新たな理論的背景を提示し、それと整合的な実験テータを提供できた。それらの結果を、実験社会科学カンファレンスや研究会等で報告するに至った。現時点では英文の論文化作業が継続している。 なお,岡野芳隆・舛田武仁の両氏を研究協力者として擁し,共同研究を実施している。上記成果は主に、Nishimura et al. (2020), Aoyagi-Nishimura-Okano(2022)に反映されている。
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