研究課題/領域番号 |
16H03598
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西村 和雄 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 特命教授 (60145654)
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研究分担者 |
上東 貴志 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (30324908)
岩佐 和道 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (00534596)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 経済理論 / マクロ経済学 / 非線形動学 / 人的資本 / 教育 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、28年度は、経済成長の基本モデルに外部性を考慮することで、その安定性と不安定性の分析を行い、29年度の人的資本を入れた内生的成長の研究に結び付ける準備をした。人的資本の理論研究については、昨年1年の間に共同研究を着実に進めてきた。 キャスとシェル(JPE1983)は、経済のファンダメンタル(技術や選好など)に依存しない不確実性をサンスポットと呼び、それが均衡に影響することを議論した。また、経済のファンダメンタルに依存しない経済主体の主観的期待(アニマルスピリット)もまた均衡に影響する。研究代表者は、昨年の研究の中で、マクロ経済における人々の予想が果たす役割について、 Sunspots and Non-Linear Dynamics を企画編集して、Springer社から出版し、その中に、 サンスポット均衡の存在証明を与えた論文、所得効果がサンスポット均衡に与える影響を分析する論文の2編を掲載した。また、政府の支出が景気循環をもたらすことについて、多数の経済主体のモデルで証明した論文はMacroeconomic Dynamicsに発表された。また、消費の外部性が存在する場合の 人々の予想の変化がもたらす、均衡の不決定性を分析する論文を International Journal of Dynamical Systems and Differential Equationsに発表した。 一方、人的資本の生産性に対する寄与に関する実証研究としては、日本人の子育ての方法が、子供が成人した後の所得、学歴、幸せにどのように影響するかを調べ、その結果を Journalism and Mass Communication に発表した。その結果は就学前教育についてのHeckmanの研究とも符合するところがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年は、マクロ経済動学理論において、5本の英文論文を発表し、単行本 Sunspots and Non-Linear Dynamics,を編集してSpringer社から出版した。その本に掲載した、 Nishimura and Shigoka(2016)においてサンスポット均衡の存在証明を与え、 Dufourt. Nishimura. and Venditti(2016)において,所得効果がサンスポット均衡に与える影響を分析した。 Nishimura, Nourry, Seegmuller and Venditti(2016)は多数主体のモデルで、財政支出がサンスポット均衡に与える影響を分析し、 Kunieda and Nishimura論文(2016)では、消費の外部性が存在する経済でのサンスポット均衡を分析した。 理論面では人的資本に関する研究は、Venditti教授との共同研究で現在進行しており、國枝氏との共同研究では、今後発展させていく予定である。 人的資本の実証研究において、子育ての方法によって、子どもが成人した後にどのような人材になるかを調査し、日本語で西村・八木論文1本、英文でNishimura and Yagi(2016)論文を1本発表した。さらに、八木教授との調査結果などを、現在邦文論文、英文論文にまとめつつある。このまま続けることで、成果を上げることができるのは明らかである。
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今後の研究の推進方策 |
経済成長理論では、非線形マクロ動学モデルを用いて、人的資本の役割や、経済主体が、他の経済主体の活動について予想とその実現などを通じた依存関係の分析を行い、経済主体の相互依存が内包する、経済変動の発生と消滅のメカニズムを解明する。また、非線形動学の立場から、短期及び長期の内生的経済変動の相互作用のメカニズムを解明する。 また、人的資本の生産性について、過去の調査結果の検討を行い、新たな調査の設計を行う。本研究は、理系科目の学習が卒業後の労働生産性に与える影響を, 理系学部出身者,また様々な私立大学と国公立大学の出身者を対象に含めた幅広い視点から検討し、優秀な研究開発者の規定要因を明らかにすることを通じて、高い研究成果を産み出す研究開発者を育てるための政策的含意を示す。 また、単に労働生産性のみならず、成人後の幸せについての、より詳細で、実証的な分析を行う予定である。 以上の研究結果を、論文にまとめて、コンファランス、学術誌で発表してゆく。
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