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2016 年度 実績報告書

長期停滞からの脱却過程に関する研究:「失われた20年」は克服されたのか

研究課題

研究課題/領域番号 16H03604
研究機関大阪大学

研究代表者

小川 一夫  大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90160746)

研究分担者 得津 一郎  神戸大学, 経営学研究科, 教授 (80140119)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードアベノミクス / 失われた20年 / 家計意識 / 企業意識 / 予想成長率
研究実績の概要

21 世紀に入り家計や企業の意識にどのような変化が生じたのか、家計や企業を対象に実施された各種アンケート調査のデータを収集して記述的な分析を行った。家計の意識については、内閣府『消費動向調査』に基づいて、消費者の暮らし向きに関する意識の変化などを総合的にとらえた「消費者態度指数」と消費者態度指数を構成する4つの消費者意識指標(暮らし向き、収入の増え方、雇用環境、耐久消費財の買い時判断)を収集して分析を行った。特に、アベノミクスが実施された時期の前後で消費者の意識がどのように変化したのか焦点を当てて、世帯主年齢、世帯区分(勤労者世帯、自営業者、無業者)、年間所得、地域といった家計の属性別に時系列的分析を行った。
また、家計のなかでも米作を営む農業家計については、農林水産省『米生産費統計』のパネルデータを使用して政府の農業政策に対する米作農家家計の反応について計量分析を行った。1993年に成立した「農業経営基盤強化促進法」の下で、経営規模拡大の目標、農業経営の合理化を推進する農業者は認定農業者と認定され、農業の担い手の役割を期待されてきた。しかし、われわれの分析結果からは、認定農業者ほど稲作としての耕地利用率を低下させ転作を進めており、しかもその効果は効率的な認定農業者ほど大きく、政策の意図とは逆の結果が表れていることが明らかになった。
企業については、内閣府『企業行動に関するアンケート調査』をベースに企業意識(期待)の変化について記述的分析を行った。アンケート調査項目は多岐にわたるが、特に企業が次年度、今後3年間、今後5年間について経済成長率の見通しをどのように変化させてきたのかに着目して分析を行った。また、経済全般に対する見通しが自らの業界需要の見通しとどのように関連しているのか、企業属性による意識変化の違いに注目しながら、産業、企業規模別に検討を加えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、21世紀に入り家計や企業の意識がどのように変化してきたのか、家計や企業のアンケート調査の集計結果を用いて時系列的に概観を行った。この作業によってアベノミクス前後で家計や企業意識にどのような変化が見られたのか、マクロ的に把握することができた。この作業を踏まえて次年度以降は家計や企業のマイクロデータによる掘り下げた実証分析を行うことになる。集計されたデータに基づく準備段階を経てマイクロデータを用いた本格的な計量分析を行うことは当初の予定通りで有り、このプロジェクトは順調に進んでいると評価できる。以上の点に加えて、本年度は農家家計のマイクロデータに基づいて、政府の農業政策に対する米作農家家計の反応についても定量的に分析し、論文に纏めることができた。この成果は当初想定しなかった点である。

今後の研究の推進方策

今年度は、企業の意識の変化をミクロ的に捉えるために必要な企業の個票データとして、日本政策投資銀行設備投資研究所が提供している『企業財務データバンク』を購入した。翌年度以降はこのマイクロデータから企業の将来の収益性に対する見通しを表す指標として「限界q」を作成して、企業の属性によってその大きさにどのような差違があり、アベノミクスの前後で有意な変化が生じたのか定量的分析を進めていく。さらに、企業の将来収益に対する予想の変化が、設備投資、研究開発投資等の将来と密接に関連した企業活動に与える影響について、実証分析を行う予定である。 このような実証分析によってアベノミクスが企業行動に与えた効果について実証的検討を加えることが可能となる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] グローニンゲン大学経済学部(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      グローニンゲン大学経済学部
  • [雑誌論文] Inefficiency in Rice Production and Land Use: A panel study of Japanese rice farmers2016

    • 著者名/発表者名
      Kazuo Ogawa
    • 雑誌名

      経済産業研究所(RIETI) Discussion Paper Series 17-E-020

      巻: 20 ページ: 1,34

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Inefficiency in Rice Production and Land Use: A panel study of Japanese rice farmers2016

    • 著者名/発表者名
      Kazuo Ogawa
    • 学会等名
      The Hitotsubashi-RIETI International Workshop on Real Estate Market, Productivity, and Prices
    • 発表場所
      経済産業研究所(東京都千代田区)
    • 年月日
      2016-10-13 – 2016-10-14
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会・シンポジウム開催] Workshop on Modern EU Economy: R&D Spillovers and Sovereign Debt Problem2016

    • 発表場所
      神戸大学(神戸市灘区)
    • 年月日
      2016-11-18 – 2016-11-18

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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