研究実績の概要 |
本研究は, 「高次元データの統計分析」という研究課題のもと, 計量経済学の研究者が, 数理統計学・統計的機械学習の研究者と協力して高次元データの分析手法を開発すると同時に, 共同研究を通じて新たな計量経済学研究のシーズを探る。5年間の全研究期間を通して, 次の4項目について重点的に研究を進め研究成果の獲得を目指す: (1) 高次元共分散行列の推定と応用; (2) 経済時系列データ解析手法の開発; (3) 新たな操作変数推定法の開発;(4) 経時データの高次元推測法の開発。このうち, (1)については, 正準相関分析における変数の冗長性検定統計量の分布の大標本・高次元漸近展開公式の計算可能な誤差を得, 学術誌に掲載された。 また, 代表的なMANOVA 検定統計量である, Bartlett-Nanda-Pillai検定統計量の帰無分布の大標本高次元での極限分布による近似公式の計算可能な誤差限界を得た。(2)については, 1次のWhittaker-Henderson smoothingについてサンプルサイズが無限大の場合のスムーザー行列の性質を明らかにするなどしたほか, 計量経済分析への応用を念頭にしてスパース非負値行列分解のアルゴリズムについて調査した。(3)については, 多くの変数を含むファクターモデルの操作変数推定について考察した。具体的には, 2段階最小二乗推定量など14種類の推定量のパフォーマンスをモンテカルロ実験で比較した。(4)については, 目的変数ベクトルの次数が大きい場合での多変量回帰モデルにおける変数選択問題において, どのような非心パラメータ行列, また真のモデルの分布がどのような分布であっても一致性を持つような一般化Cp規準の条件を目的変数ベクトルの次数も無限大としてもよい漸近理論の下で導出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断できる。その理由を(1) 高次元共分散行列の推定と応用; (2) 経済時系列データ解析手法の開発; (3) 新たな操作変数推定法の開発;(4) 経時データの高次元推測法の開発に分けて記す。(1)について: 統計量の分布の大標本・高次元漸展開近似に関して一定の結果を得たことによる。 (2)について:1次のWhittaker-Henderson smoothingについてサンプルサイズが無限大の場合のスムーザー行列の性質を明らかにするなどしたほか, 計量経済分析への応用を念頭にしてスパース非負値行列分解のアルゴリズムについて調査したことによる。(3)について:数値実験で推定量のパフォーマンスを調べるためのプログラムの作成やその考察も終わっていることによる。 (4)について:本研究課題に取り扱っているGMANOVAモデルの特別な場合として, 多変量線形回帰モデルがある。多変量線形回帰モデルでの統計量の性質を明らかにすることは, GMAMOVAモデルの統計量の性質を明らかにすることに役立つと考えられるため。
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