研究課題/領域番号 |
16H03606
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山田 宏 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (90292078)
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研究分担者 |
早川 和彦 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (00508161)
栗田 多喜夫 広島大学, 工学研究科, 教授 (10356941)
柳原 宏和 広島大学, 理学研究科, 教授 (70342615)
若木 宏文 広島大学, 理学研究科, 教授 (90210856)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高次元データ / 経時データ / 平滑化 / 非負値行列因子分解 / 操作変数法 |
研究実績の概要 |
研究期間(5年間)の4年目にあたる2019年度は,(1) 経時データの高次元推測法の開発,(2) 経済時系列データ解析,(3) 新たな操作変数推定法の開発について重点的に研究を進めた。(1)の研究成果: (1a) Bartlett-Nanda-Pillai検定統計量(BNP検定統計量)の帰無分布は多変量ベータ分布に従う確率行列の関数の分布として表現される。大標本・高次元の漸近枠組みでは,2つの自由度が共に発散するが,1変数関数の積分に対するラプラス近似が多変量ベータ分布に従う確率行列の期待値の近似法にも応用できることが分かり,BNP検定統計量の帰無分布の大標本・高次元漸近展開公式と,その計算可能な誤差限界を導出した。(1b) 目的変数ベクトルの次数と説明変数の個数が大きい場合での多変量回帰モデルにおける変数選択問題において, 標本数は無限大となるが,目的変数ベクトルの次元と説明変数の数は無限大となるかもしれないといった設定の漸近理論の下で, どのような真の回帰係数行列・分散共分散行列の下でも一致性を満たすような罰則項を持つ一般化Cp規準などを提案した。(2)の研究成果: (2a) 非負値行列因子分解法の各基底ベクトルにグラフ正則化により平滑化し,係数行列をスパースにするように拡張し,経済時系列データに適用した。(2b) 離散コサイン変換を応用したある平滑化法の理論的・実証的な研究を行い成果を得た。(3) の研究成果: 予測回帰モデルの操作変数推定について考察した。予測回帰モデルを最小二乗法で推定すると,誤差項と説明変数の間に相関が生じ,有限標本バイアスが大きくなるという問題が生じる。この問題を解決するために,Forward Orthogonal Deviationで変換したモデルの操作変数推定量を提案した。さらに,モンテカルロ実験によりそのパフォーマンスを評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断できる。この研究課題では,(1) 経時データの高次元推測法の開発,(2) 経済時系列データ解析,(3) 新たな操作変数推定法の開発という3項目について重点的に研究を進めているが,どの項目についても研究成果が得られ世界的に評価の高い査読付国際学術誌に論文が採択されている。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間(5年間)の最終年度にあたる2020年度は,次の4項目について重点的に研究を進め研究成果の獲得を目指す:(1) 大標本・高次元漸近展開法を使った多変量回帰分析法の新展開:(1a) 目的変数ベクトルの次数と説明変数の個数が大きい場合での多変量回帰モデルにおける変数選択問題において,大標本・高次元漸近理論の下で,KLダイバージェンスに基づくロス有効性と平均有効性を持つような情報量規準を提案するとともに,この研究課題を通して提案した情報量規準量を数値的に比較する。(1b) 多変量線形モデルの代表的な検定統計量の内,HotellingのT2,Bartlett-Nanda-Pillai検定統計量の大標本・高次元漸近展開公式をラプラス近似を用いて導出し,その計算可能な誤差限界を与える。(2) グラフ正則化を使った非負値行列因子分解法の開発と応用: 各基底にグラフ正則化を導入し,係数にはスパース性を導入した非負値行列因子分解法を開発し,経済データに適用する。(3) パネルVARモデルの操作変数推定と最尤推定法の考察:パネルVARモデルの操作変数推定と最尤推定について考察する。先行研究では個別効果と時間効果が加法的に含まれたパネルVARモデルが考察されているが、本研究ではより一般的な、個別効果と時間効果が乗法的に含まれたパネルVARモデルの操作変数推定量と最尤推定量を提案し、モンテカルロ実験でパフォーマンスを調べる。(4) 罰則項付回帰分析を使った経済時系列の分解手法の開発と応用:ロス関数にチェック関数を用いた新たな分位点トレンド推定法を開発し,経済時系列データに応用する。
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