研究課題/領域番号 |
16H03610
|
研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
岡本 亮介 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (60323945)
|
研究分担者 |
長谷川 誠 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (50722542)
細江 宣裕 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (60313483)
吉田 雄一朗 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (70339919)
城所 幸弘 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90283811)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 費用便益分析 / 国際課税制度 / 賃金とスキル |
研究実績の概要 |
主要なものとして3つの研究成果を得た。それぞれの概要は以下の通り。
城所は大橋(編)(2020)のなかで、国土交通省における費用便益分析の実態を事例を交えながら整理し、今後に必要な改革の方向性を考察した。特に重要なのは以下の3点である。第一に、実験的設計を行ってデータを取得し、政策の前後を単純に比較するのではなく、政策がなかった場合に何が起きたかに焦点を当て、政策の効果を科学的に検証することが必要である。第二に、交通需要予測や費用の予測に関しては、大きな不確実性があり、それに基づく費用便益分析は確率分布に従うことを直視すべきである。第三に、現在の費用便益分析手法の妥当性について再点検すべきである。 Hasegawa (2019)では、2009年度税制改正による国際課税制度の変更とともに、日本企業の利益移転が活発化したことを示している。この背景には、多国籍企業が企業グループ全体での法人税負担を減らすために、課税前利益を高税率国の関連企業から低税率国の関連企業へと移転する誘因を持つ(利益移転と呼ばれる)ことがある。この点について日本の多国籍企業の利益移転行動を実証的に分析した。 Nakajima and Okamoto (近刊)では、日本の個票データを用いて、労働者の賃金を個人属性が説明する個人スキルの効果と居住地域の効果に分解した。労働者を居住地域で大都市圏と非大都市圏に分類すると、大都市圏において個人スキルの平均が高くなるという格差が、観察された。労働者を出身地で分類した場合には個人スキルの格差は縮小するので、労働者の移住によって地域間の賃金格差が拡大されているということが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた各分野で、とくに、多国籍企業が関わる国際的な税制分析や、費用便益分析の理論と実務両面における改善、さらには、地域間の賃金分布と労働者のスキルの関係といったテーマについて論文や書籍の出版を実現できた。そのほかの分野においても、公刊までには至らないものの、来年度以降に成果を発表するための研究蓄積が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も、計画通り各分野ごとに研究を推進する。たとえば、費用便益分析については、空港への規制がもたらす影響に関して、駐車場、ショッピングモール等の非空港事業を考慮して、一般均衡的な枠組みの中で分析する。地域経済分析においては、個人のトリップデータを用いて、企業間コミュニケ-ションの利益の測定を行う。また、地域間の交通利便性の差がどのように地代に反映しているかを検証する。ディスカッション・ペーパーとして公開したものについては、学術雑誌へ投稿し公刊を目指す。
|