研究課題/領域番号 |
16H03618
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
地主 敏樹 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (60171089)
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研究分担者 |
竹田 陽介 上智大学, 経済学部, 教授 (20266068)
海野 晋悟 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 講師 (20724610)
英 邦広 関西大学, 商学部, 准教授 (40547949)
井田 大輔 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (50609906)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金融政策 / インフレ期待 / 社会経済的要因 / 金融政策正常化 / 低インフレ率 / 自然利子率 / 歴史的変遷 / フィンテック |
研究実績の概要 |
春に労働市場の賃金構造に関する研究会を上智大学で開催して、川口大司教授(東京大学)の報告を基に、人口構造などの賃金への影響に関する問題を議論した。インフレーションに関する社会経済要因の重要性が強く認識された。この認識に基づいて、インフレ期待のデータの規模を縮小することとして、日経センターの作成しているエコノミスト・フォーキャストに変更した。日本の低インフレ下でのインフレ期待形成に焦点を当てることとして、当該データで十分であると判断された(同データを用いた分析を新たに購入したワークステーションで実施しており、予備的な検討の結果は、地主が2019年4月に東京大学ー日本銀行共催のコンファレンスでパネリストとして発言するために用いた)。 夏に日本銀行の金融政策の長期的な変遷を、鎮目雅人教授(慶応大学)の報告を基にして、神戸大学で検討した。翌年にかけて、非伝統的金融政策に関する歴史的検討に繋がった。秋には、鹿児島大学で開催された日本金融学会に併せて開催した研究会で、チームのメンバーの研究経過を検討するとともに、中島真志教授(麗澤大学)の報告を基にして仮想通貨・フィンテックの将来性に関して検討した、フィンテックに関しては、興味深い進展のある中国の現地調査も実施して、金融産業・政策への影響を翌年にかけて検討している。 冬には、地主と竹田がフィラデルフィアで開催されたアメリカ経済学会に参加して、研究協力者のKenneth Kuttner(Williams Colege)と本研究の方向性に関してアドバイスを受けながら、議論した。 4回の研究集会を通じて、労働市場要因や歴史的観点およびフィンテックなど、マクロ経済学で捨象されがちな社会経済的要因に関連するポイントを積極的に取り入れることができた。当科研研究チームのメンバーは、得られた諸コメントを活用して、それぞれの研究を進めつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
春・夏・秋と3回の国内研究会を活発に開催して、研究チーム内外の研究者による報告と議論を通じて、各メンバーがそれぞれの研究を深めつつある。社会経済的要因を始めとする諸要因の趨勢的な変化とその金融政策正常化への影響を考慮するには、様々な分野の専門家の協力が必要である。研究者間のネットワークを通じてそうした協力を得ることができて、研究チームの知見を深めることができている。 そうした知見に基づいて、インフレ期待に関するデータの購入を再検討して縮小することができた。縮小したデータの分析も新たに購入したワークステーションで実施しており、プレリミナリーな結果は、地主が2019年4月15日に東京大学ー日本銀行共催のコンファレンス「現代日本のインフレ動学」でパネリストとして発言するために用いることができた。また、フィンテックの重要性を確認して、金融産業および金融政策正常化への影響を検討するようになった。 海外の研究協力者であるKenneth Kuttner教授(Williams College)の米国の知見に基づくアドバイスも受けることもできた。各メンバーが、担当する研究テーマに即した論文を執筆して、学会で発表したり投稿を進めつつあるので、おおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度からの研究を受けて、2018年度には定例的な研究会を開催するだけでなく、Kenneth Kuttner教授(Williams College)を日本に招聘してのワークショップも神戸大学で開催して、研究チームのメンバーが研究報告をしただけでなく、本研究の方向性についても丁寧に吟味した。現在の研究チームのメンバーと密接な協力関係にある研究者たちの協力も得ながら、有力と考えられる社会経済的要因の自然利子率やインフレ期待への影響の理論的・実証的な研究を続けてきた。縮小した規模のインフレ期待データを用いた分析も、新たに購入したワークステーションで実施しており、プレリミナリーな検討の結果は、地主が2019年4月15日に東京大学ー日本銀行共催のコンファレンス「現代日本のインフレ動学」でパネリストとして発言するために用いた。また、非伝統的金融政策に関する長期的歴史的な検討も加えた。 2019年度も3~4回の研究集会を開催して、研究チーム内外の研究者の報告と討議の機会を設けていく。金融政策の正常化にかかわる社会経済的要因として検討すべき諸要因の専門家を招いて、研究報告や議論を通じて、研究チームの知見を深める努力を継続する。日米の金融政策の歴史的・比較的な検討も通じて、重要な社会経済的要因を抽出していく。そうした検討作業から得られた具体的な社会経済的要因の自然利子率やインフレ期待への影響を検討して、その結果を学会発表や論文投稿に結び付けていく。Kenneth Kuttner教授をはじめとした海外の研究者との議論も活用していく。
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