研究課題/領域番号 |
16H03619
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
春名 章二 福山大学, 経済学部, 教授 (30136775)
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研究分担者 |
張 星源 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (10304081)
浅野 貴央 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (40423157)
神事 直人 京都大学, 経済学研究科, 教授 (60345452)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イノベーション / RTA / 国際化戦略 / ナイト流不確実性 / 環境 / R&D |
研究実績の概要 |
2018年度は当初の研究計画に沿って研究を遂行し、以下のような研究成果を上げることができた. ・技術的競争関係と財市場の競争関係を区別して貿易・FDIと技術スピルオーバー間の研究:地域貿易協定 (RTA) の「深度」を考慮した分析を取り入れた研究の成果をThe World Economy誌に公表した. ・企業の国際的生産・供給活動のダイナミックス:理論モデルの構築、実証分析のためのデータ整備と分析手法の検討を行った.地域貿易協定 (RTA) の締結が日本の多国籍企業の海外進出や研究開発のグローバル展開に与える影響の分析と、RTA等の国際協定の締結が政策的不確実性 (PU) を低下させる効果に着目しながら、PUがFDIやアウトソーシングなどを通じて企業の海外展開に与える影響の分析も研究した.加えて、日本企業の海外進出やアウトソーシングに関するデータ以外に、世界各国の貿易・FDIのデータ等の整備を行った. ・RTAが企業間競争関係とイノベーションに与える影響の分析:RTAの「深度」が進展することで加盟国の企業間で共同研究が促進される効果に関して、理論と実証の両面から分析を行った.本テーマに関する予備的な研究成果を国内外の学会及びセミナーで報告した. ・ナイト流不確実性下での企業の国際的生産活動に関する分析:前年度から引き続き本テーマに取り組み、ナイト流不確実性に関する研究の成果をEconomic Theory誌やAnnals of Operations Research誌に公表した. ・公害物質を排出する混合寡占企業の排出削減のための研究開発(R&D)活動が産出量と排出量に与える影響について理論分析を行い、研究の成果をAustralian Economic Paper誌に公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度当初は次の6つの研究内容に取り組む計画であった:研究計画は (1) 技術的競争関係と財市場の競争関係を区別して貿易・FDIと技術スピルオーバーとの関係の分析、(2) 地域貿易協定 (RTA) の締結が日本の多国籍企業の海外進出や研究開発のグローバル展開に与える影響の分析、(3) RTAの締結が政策的不確実性を低下させる効果に着目しつつ、その不確実性がFDIやアウトソーシングなどを通じて企業の海外展開に与える影響に関する分析手法の検討、(4) 企業の国際的生産・供給活動のダイナミックスに関する理論モデルの構築と実証分析を行うためのデータ整備、(5) ナイト流不確実性下でのリアルオプションの枠組みを用いて、ナイト流不確実性が企業の国際的生産・供給モードの選択にどのような影響を与えるかに関する理論分析を中心として更なる研究の推進、及び(6) 公害を発生させる混合寡占企業の排出削減のための研究開発活動が産出量と排出量に与える影響の理論分析、である.これらの研究については、おおむね計画通りに実施することができた.これらに加えてRTAの「深度」が進展することで加盟国の企業間で共同研究が促進される効果に関して、理論と実証の両面から分析に着手することができた. 以上の通り2018年度末時点での研究の進捗状況はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画は以下の通りである. ・地域貿易協定(RTA)が企業間競争関係とイノベーションに与える影響に関する分析:2018年度から分析を始めた、RTAの「深度」が進展することで加盟国の企業間で共同研究が促進される効果に関して、次年度(2019年度)は理論と実証の両面から分析を更に進める.新たに取り組むサブテーマとして、RTAの「深度」と加盟国の企業間での技術移転との関係を理論と実証の両面から分析する. ・企業の国際的生産・供給活動のダイナミックスについて、政策的不確実性 (PU) が企業の国際的生産・供給活動のダイナミックスに与える影響に着目し、企業の参入・退出に関する理論分析を行うと共に、日本企業の海外進出やアウトソーシングに関するデータ以外に、世界各国の貿易・FDIのデータ等を用いてその実証分析を行う.この分析では、RTAや二国間投資協定などの貿易や取引に関する国際的な協定がPUを低下させる効果を理論と実証の両面から考慮する. ・ナイト流不確実性下での企業の国際的生産活動に関する分析:2018年度に引き続き、ナイト流不確実性下でのリアルオプションの枠組みを用いて、ナイト流不確実性が企業の国際的生産・供給モードの選択にどのような影響を与えるかに関して、理論分析を中心に研究を更に推進する. ・汚染物質を排出する寡占企業の産出量・汚染物質排出量と排出削減のための研究開発の関係を国際貿易を考慮しながら理論的に分析する.
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