研究課題/領域番号 |
16H03627
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高阪 章 大阪大学, 国際公共政策研究科, 名誉教授 (00205329)
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研究分担者 |
木村 福成 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90265918)
佐藤 清隆 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30311319)
三重野 文晴 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (40272786)
大槻 恒裕 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (40397633)
塩谷 雅弘 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (70340867)
岡部 美砂 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (20434649)
北條 雅一 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30362601)
新開 潤一 近畿大学, 経営学部, 講師 (10571648)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国際経済学 |
研究実績の概要 |
本研究は東アジアと欧州の先進国および新興国を対象とし、1980 年代以降の産業構造変化と経済成長の相互関係を解析する。この2地域はそれぞれ経済主導および政治主導で経済統合化が急速に進んでいる地域であり、統合化は貿易・投資・金融チャネルを通じて生産性と産業構造の収束プロセスに無視できない影響を与えている。そこでまず、生産性の部門別収束パターンの相違に着目し、多部門経済の産業構造変化と経済成長の関係を実証する。そこから明らかになる各国の部門別生産性収束パターンの差や収束速度の差を決める要因はどこから来るのかを探る。次に、生産性の収束パターンが域内統合化からどの程度の影響を受けているか(「スピルオーバー効果」)をみる。さらに、企業活動のグローバル化が産業構造変化に与える影響を生産ネットワーク化、および国際産業連関の視角から考察を加え、最後に、今後の成長戦略へのインプリケーションを導く。 平成29年度は、推定された部門別生産性成長収束パターン、およびその要素市場構造及びファンダメンタルズの回帰分析結果を個別国・地域別に完成させ、各国の経済発展戦略に対する政策含意を考察した。スタートアップの成果を踏まえ、国内研究会によって研究課題の焦点をさらに絞るとともに、各メンバーは、研究成果を随時ワーキングペーパーにまとめ、それを基礎に関連機関を訪問し、関連研究者との間でフィードバックを行い、また、各種国際学会・会議・研究会などで報告を行った。 なお、平成30年度に持ち越した国際ワークショップは9月にエクスマルセイユ大学(フランス)において開催した。そこでは、グローバル経済統合とマクロ経済運営に焦点があてられ、新興国への資本流入、人民元の国際化、アジア諸国の為替政策、国家投資会社のポートフォリオ戦略などが議論された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、推定された部門別生産性成長収束パターン、およびその要素市場構造及びファンダメンタルズの回帰分析結果を個別国・地域別に完成させ、各国の経済発展戦略に対する政策含意を考察した。スタートアップの成果を踏まえ、国内研究会によって研究課題の焦点をさらに絞るとともに、関連機関への海外調査や関連研究者を招いてヒヤリングおよびワークショップを実施し、研究の深化を図った。具体的には通り。 5-6月には、イタリアで開催された国際学会Management International Conference (MIC) 2017, Monastier di Treviso, Italyにおいて、報告を行い、関連研究者と意見交換および情報収集を行った。次いで、9月には、札幌学院大学において、国内合宿研究会を開催し、①オートメーションの雇用効果、②大不況下の資本収益率、をめぐるヒヤリング・論文報告と意見交換を行った。1~2月には、東京で開催された太平洋貿易開発会議PAFTAD 39: Growth, globalization and intergenerational issues in the Asia Pacific, Tokyo, Japanに参加し、包摂的経済成長と世代間流動の側面から産業構造変化の雇用への影響を考察した。 その他、数回の国内研究会を開催し、国際開発分野では、資源国の開発戦略、中国のWTO加盟の効果、外資流入と国内信用配分、生産性成長にみる資源配分効率、など、国際マクロ分野では、アジアのマクロ経済運営、安全資産に対するグローバル需要、ゼロ金利下のディスインフレ、などの論点をそれぞれ考察した。そして、11月から、商業出版に向けて出版企画の検討を開始した。ただし、年度末に予定していた国際ワークショップは報告者間の日程を再調整し、次年度に開催することとした。以上より、国際ワークショップの開催こそ延期に至ったものの、とりわけ産業構造変化の労働市場への影響の考察を深化することができた点で、研究の進捗は概ね順調であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、東アジアと欧州の先進国・新興国を対象とし、1980 年代以降の経済成長と産業構造変化の相互関係を分析する。まず、集計量を用いて要素生産性成長の潜在成長への相対的貢献度を確認した上で、生産性の部門別収束パターンの相違に着目し、多部門経済の産業構造変化と経済成長の関係を実証する。そこから明らかになる各国の部門別生産性収束パターンの差や収束速度の差を決める要因はどこから来るのかを探る。次に、生産性の収束パターンが域内統合化からどの程度の影響を受けているか(「スピルオーバー効果」)をみる。さらに、企業活動のグローバル化が産業構造変化に与える影響を生産ネットワーク化、および国際産業連関の視角から考察を加え、今後の成長戦略へのインプリケーションを導く。今年度は、推定された部門別生産性成長収束パターン、およびその要素市場構造及びファンダメンタルズの回帰分析結果を個別国・地域別に完成させ、各国の経済発展戦略に対する政策含意をまとめた。 最終年度は、以上の成果を踏まえ、国内研究会によって研究課題の焦点をさらに絞るとともに、関連機関への海外調査や関連研究者を招いてヒヤリングおよびワークショップを実施し、また、海外において学会発表を行う。その狙いは、研究の進行状況をチェックし、研究協力者の評価を経て、研究内容のステップアップのモメンタムを得ることにある。また、研究成果の商業出版に取り組む。今年度後半から開始した編集作業を進めるために国内会合を開催する。また、2年度目の成果を踏まえて、年度途中に国際ワークショップを行う。ここでのねらいは、最新の研究成果を公表し、本研究の関係者のみならず、より広範な研究者各層にそれを知らしめ、かつそこからフィードバックを得ることにある。
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