世代間問題の1つとして、公的年金制度を取り上げ、その実際の機能を計量的に分析した。その分析によって得られた主要な知見は、以下のとおりである。 1. 公的年金には2つの要件が求められている。1つは財政の長期的安定性であり、もう1つは個々の給付の十分性(adequacy)である。この2つの要件を同時に満たすことは容易でない。一方の要件を重視すれば、他方の要件が満たされないからである。ただ、双方の要件を同時に満たすことは必ずしも不可能ではない。高齢化が進行するときには、可能なかぎり長く働きつづけること(work longer)を加入者に求めれば良い。 2. 日本男性の雇用者率は65歳を境に落ち込みが著しい。在職老齢年金制度による年金給付の支給停止部分が繰り下げの対象になっていないこと、失業保険給付が65歳前後で変わり、給付額の低下分が少なくないこと、などが、その主な原因となっている. 3. 70歳現役社会を実現するためには、65歳時点で発生している雇用阻害効果を除去する必要がある。たとえば、65歳以降の在職年金制度を廃止すること、65歳以前の失業保険制度は65歳以降も内容を変えずに維持すること、が少なくとも求められている。 今回の研究プロジェクトで実施したアンケート調査(年金加入記録の転記を含むLOSEFインターネット調査)はパネル調査であり、最近の実態を知るためには、それを継続して調査、実施する必要がある。
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