研究課題
平成30年度には二つの計画を実施した。企業データを用いた労働市場の分析に関しては、企業活動基本調査を用いた為替レートショックへの雇用調整行動の分析に関して論文の改訂を終え、Industrial and Labor Relations Review誌への出版が決定した。この論文では為替レート変動が雇用調整に与える影響を分析したが、円高になると輸出企業の売り上げが落ちることが確認され、それに合わせて非正規労働者の雇用も減少することが明らかになった。その一方で正規労働者の雇用は変化しないことも明らかになり、雇用形態ごとに雇用調整の非対称性があることが明らかになった。さらに雇用主労働者マッチデータの作成に向けて、厚生労働省の賃金構造基本統計調査、雇用動向調査、総務省の事業所企業調査、経済産業省の工業統計、商業統計、企業活動基本調査の名簿情報をも含めた個票の利用申請を行った。マッチデータの作成並びにそれを用いた研究の推進は今後の課題として残った。厚生労働省の労働者派遣事業報告の個票データを用いた分析であるが、分析結果を論文の形にまとめ一橋大学で行われた研究会にて発表し、『経済研究』誌に出版した。分析の結果、派遣事業者の集中度が高い地域では派遣料金と賃金の差額が派遣料金に占める比率(マージン率)が高いことが明らかになった。これは派遣事業者が市場支配力をこうしている可能性があることを示唆する結果である。分析手法を拡張し、研究分担者とも協力しながら産業組織論など労働経済学以外の分野からの視点を通じて分析をさらに深めることができないかの検討を始めた。この協働作業を深め論文の出版につなげていくことが今後の課題として残った。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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