研究課題/領域番号 |
16H03634
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
安川 文朗 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (90301845)
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研究分担者 |
勝山 貴美子 横浜市立大学, 医学部, 教授 (10324419)
根本 明宜 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (20264666)
吉永 崇史 横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 准教授 (40467121)
中田 喜文 同志社大学, 政策学部, 教授 (50207809)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医師需給 / 医療ニーズ / 地域医療 / プライマリケア / 職種間連携 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度の基礎的情報収集および先行研究サーベイの成果を踏まえて、 1)医師需給推定の基礎となる医師供給に関する決定要因分析、特に地域のプライマリケア医の動向に関する予備的推定作業 2)ニーズ推定の基礎となる地域における医療ニーズ動向や医療施設選択、また医療に対する満足度や世帯構造と医療ニーズとの関連に関する、厚生労働省の基幹統計個票データによる分析作業 3)英国、オランダにおける医師確保と他職種連携に関する実態調査 を実施した。 まず1)については、公表データ(二次データ)を用いて、診療所医師のうちプライマリケアに従事していると想定される医師群の過去15年間のデータから、二次医療圏単位でのストック(就業者数)とフロー(対前年変化)とをプロットし、その動向からOLSシミュレーションによって今後のプライマリケアの就業予測を行った。その結果①ストックについてはすべての医療圏で経年的変化が全く見られないのに対して、フローは大きな格差があること、②フローの動向を踏まえたシミュレーションからは、すべての医療圏で今後プライマリケア従事者の減少が予測されること、が明らかになった。この結果は国際地域医療看護研究学会2017で報告するとともに、論文化した。また2)では、「国民生活基礎調査」「医療施設調査」「受療行動調査」の個票データから、医療ニーズと医療供給体制との関係を検討した。その結果①世帯成員の健康意識(主訴)の大きさと診療所医師数および訪問看護実施数との間には、それぞれ正の関係と負の関係が見られ、地域ケアの充実が世帯成員の健康度の維持に貢献する可能性があること、②患者の診療満足度には医師の十分なコミットメントが強く働いている可能性があること、が示された。この結果は現在論文化の途上である。3)については、特にオランダの地域看護と医師との代替による地域医療資源確保の実態を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体としては研究計画に沿って研究が進められているものの、研究代表者が2018年1月~3月まで健康上の理由で入退院を繰り返したため、実質的に研究が行えたなかったこと、また厚労省の開示データのデータベース化に予想外の時間を要したことなどから、当初の予定に比べるとやや研究の遅れがあると考えられる。ただし現時点でいずれの障害もほぼ解決されており、最終年度に向けて遅れを取り戻すべく研究速度を上げる態勢がとれるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後(次年度)は、厚労省開示データに基づく分析を終了し、わが国の(地域単位の)医療ニーズの決定要因を明らかにするとともに、医師自身のワークライフバランスなど就業環境の変化も視野にいれた、医師供給動向の再検討も行って、ニーズベースによる医師需給推定の新たな可能性と課題を明らかにすること、また、近年急速に進展しているAI導入やゲノム医療、遠隔医療などの医療提供体制全般の変革が、医師需給にどう影響するかについて、国際的視点からをふまえた議論をおこない、それと本研究で得られる知見との整合性について検討する予定である。 また、医師需給のあり方はその補完的資源である看護師の動向や、急性期慢性期およびプライマリケアといった専門性の分化のあり方とその就労意識に密接にかかわることから、これらの今後の動向を新たに病院、診療所を対象にした質問紙調査によって情報収集し、単に数的な需給予測だけではなく、いくつか予想される医療従事者の就労シナリオを提示することで、今後の医師需給のリアリティとは何かについて問題提起できるように考えている。
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