研究課題/領域番号 |
16H03635
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
焼田 党 南山大学, 経済学部, 教授 (50135290)
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研究分担者 |
宮澤 和俊 同志社大学, 経済学部, 教授 (00329749)
平澤 誠 中京大学, 経済学部, 准教授 (50706801)
大森 達也 中京大学, 総合政策学部, 教授 (70309029)
北浦 康嗣 法政大学, 社会学部, 准教授 (90565300)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 少子化 / 家族の経済学 |
研究実績の概要 |
2年目の昨年度も、当初の予定通り、研究分担者各自でそれぞれの領域の関連文献の精読と理解に主眼を置いて進めた。研究代表者は、家庭内構成員の間の交渉が経済単位としての家庭の意思決定、特に子ども数および子どもの教育水準の選択に与える影響の分析を進めた。そこでは母親の教育・所得水準によっては、育児補助が出生率を上昇させるとともに女性の教育水準も上昇させることがありうることを示した。研究成果を日本応用経済学会や他の研究集会で報告して得られたコメントや議論に従って修正し、結果的にJournal of Population Economics誌に受理された。また、研究分担者のひとりはgrandmothering理論に基づいて理論モデルを構築して出生率に関する分析を進め、研究集会で報告している。また、確率的投票理論に基づいて経済成長が世代間再分配に与える影響を分析している。もうひとりの研究分担者は、高齢者に対する健康支出と若年者の教育投資支出の配分について研究をすすめ、Studies in Applied Economicsに成果論文が受理されている。他の研究分担者についても、関連文献の精読に基づいてモデル作成に取り組んだ。また、研究代表者が進めてきた女性の労働供給と家計の出生率決定のモデルを、資本蓄積を考慮することで動学化した研究も一定の結果がでて、研究集会で報告した。さらに、夫婦間の意思決定をNash交渉やいわゆるCollective Modelの特徴を組み込んで出生率に与える影響を検討した。結果的には出生率に影響を与えうるのは、育児政策・家庭政策ではなく、教育政策であることが示された。これも国内外のいくつかの研究集会で議論した。 プロジェクトのメンバー間の研究集会ではグループ外部から研究者を招聘し、各自の研究の深化に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績概要に記したように、研究代表者はじめ研究分担者は文献の精読と合わせて、独自の問題意識に基づいた理論モデルの構築を目指している。研究代表者は、家庭内での構成員間のバーゲニングが家庭の意思決定に与える影響を分析するために、先行文献を発展させて独自のモデルを構築している。さらに、Collective Modelにおける交渉力を内生化することで、モデルの結果がどのように修正されるかを検討している。欧米ではCollective Modelのウエイトを数理的に推計したりしており、Collective Modelの考え方が、一般的に受け入れられてきている。しかし、数理モデルでの推計には、データと基礎となるモデルの前提とに依存している部分があり、理論的にどのような可能性があるかを検討しておくことが必要である。そのために、従来Unitary Modelに基づいて得られている結果を再検討する作業が必要であると考え、様々な可能性をさぐっている。grandmotheringが出生数に与える影響については、モデル化がなされており、政策的インプリケーションについて考察を進めている。さらに、教育政策と出生率に関する関係についても、従来公表された先行文献を発展させて、独自の視点の明確化とモデル化を進めている。さらに世代間所得分配にかかわる公債管理と出生率のかかわりについても分析し、一定の成果をえている。他の分担者も各自のテーマについてモデル化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、各自のアイディアをモデル化し、経済学的・政策的インプリケーションを導出することで、論文としてまとめる。当初の計画通り、研究代表者・研究分担者が共同で単一の論文を執筆するのではなく、各研究者のそれぞれが様々な見識から、経済にある不平等、特に家庭内の構成員間の不平等、あるいは家計間の不平等が家計の意思決定に与える影響を分析するという方針を継続する。今後は、夫婦間だけでなく、家庭内親子間のゲームなどについてもさらなる各自の独創的な研究進展と成果を目指す。それによって、最終的には様々な不平等に関する多面的・複眼的な分析成果を得ると同時に、政策的にも豊かなインプリケーションをもたらす。
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