研究実績の概要 |
当該研究課題の下で以下の研究成果を得た。 Yakita, A. (J Popul Econ 2018)では、夫婦間で交渉をすることで家計としての意思決定をするcollective modelにおける出生率と女性労働供給の決定の問題を検討し、child-care政策の拡充が、出生率とともに、女性労働供給をも上昇させる可能性があることが示された。 Yakita, A. (Rev Dev Econ 2018)では、経済発展初期の女性の相対賃金率が低い段階では、家庭内育児を女性が担うが、賃金率の上昇は女性の育児時間を減少させ、出生率は低下する。施設を伴う家庭外育児で女性が家庭内よりも多くの子どもをケアできるとすると、賃金率が上昇によって女性は家庭内育児を最小限にして高くなった賃金で子どもを預けて市場労働する。賃金上昇がさらに進むと「消費財」としての子どもがより多くなる可能性がある。 Morita, Y., Yakita, A. (応用経済学研究 2018)では、資本蓄積に伴う賃金率の上昇は出生率を低下させるが、育児政策の変更はこの収束(収縮)過程を非連続的に変化させることが示される。1990年代前後の先進諸国の政策変更が、出生率と女性労働に与えた影響をこの推論によって説明してみている。 Yakita, A. (Econ Lett 2018)では、子どもが親からの遺産と交換に親の老後のケアを供給する親子間のexchange modelで、社会保障税の引き上げが子どもの家庭内ケアを増加させ、同時に税収の減少によって社会保障給付が減少する可能性があることが示された。この研究は今後の研究の一つの方向を示している。
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