研究課題/領域番号 |
16H03648
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
山内 太 京都産業大学, 経済学部, 教授 (70271856)
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研究分担者 |
王 慧子 東北大学, 経済学研究科, 博士研究員 (00748965)
村山 良之 山形大学, 大学院教育実践研究科, 教授 (10210072)
佐藤 康行 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40170790)
長谷部 弘 東北大学, 経済学研究科, 教授 (50164835)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 複合生業史 / 生業暦 / 市場経済化 / 環境史 / 水辺文化 / 土地制度 / 村落社会 |
研究実績の概要 |
本年度は、調査対象地の資料調査、フィールドエクスカーション等を行った。各村旧庄屋資料所蔵家、巻郷土資料館、西蒲原土地改良区、新潟県立文書館、横越公文書分類センターを訪問し、家譜、日記、備忘録、大福帳等の経営資料やその他の個別家文書、近世期の村文書(村明細帳等)や近代初期の地誌(『皇国地誌』等)、明治期以降の郷土誌、調査報告書、地図や古い写真等について、資料調査・写真撮影を行い、情報・データの収集に努めた。加えて昔話、伝説、古い習慣、民俗等をインタビュー調査し、古道具、遺物等も積極的に確認した。 また福島県立図書館等、本研究課題の調査対象地である新潟市以外の資料所蔵施設をも訪問し、旧西蒲原郡諸村との繋がりを確認した。これは、本研究課題の中心テーマである複合生業を考えるうえで、人口移動、出稼ぎ等も重要なポイントであるという観点から実施した調査であったが、その結果、出稼ぎ等活発な人的移動が流出先地域の資料からも確認でき、今後も調査を継続する必要があるという見解に達した。 さらに本年度は、新潟大学で2回、東北大学で1回、都合3回の研究会を行った。研究会においては、収集された資料、データの紹介や報告、民俗学や村落史等の先行研究の検討がなされた。特に新潟大学で3月に行われた研究会では、研究報告のほかに、一年間の調査研究の総括と分析結果の検討を行い、これまでの検討作業を踏まえ、不十分な点を見直すと共に、次年度における研究方針を確認した。 これらの活動を通じて、本研究課題の調査対象地域である川や潟、海等の水辺地域における、出稼ぎも含めた独特の複合生業のあり方が明らかとなりつつある。そこにおいては、かつての水害等に苦しめられた低生産地域というイメージを覆す多様性が発見されつつある。同時にそこで生じる独特の支配構造、村を超えたネットワーク、繋がり、対立にも目を向ける必要性も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フィールドエクスカーションや資料調査を通じて、資料やデータの収集は順調に進んでいる。しかしデータベース作成、分析について、想定より遅れが生じている。特に本研究課題の中心テーマである生業暦作成作業、並びに環境復元作業の進捗状況がやや遅れている。このことは昨年度来からの課題でもある、自給的生業に関する情報の少なさが大きな原因といえる。ただし自給的生業に関する文書資料の残存が少ないため、本年度は意識的に近世期や明治期の紀行文といった出版物等に注目してきた。同時にインタビュー調査や既存調査記録を通じて、言い伝えや昔話、旧慣等口承記録の発掘、古民具の確認等も行ってきた。これらによって自給的生業に関する情報の少なさを補いたいと考えている。 そのほか民俗学や人類学をはじめ、漁業史、環境史、農学、農業史、塩業史等、広範囲にわたる各分野の研究成果を集積し、現時点での研究水準を総括する予定であったが、各分野すべての研究を網羅的に総括しきれていない。分野によってその総括に濃淡が生じている。この点も、研究進捗状況の遅れといえる。 同時にこの先行研究の一環として、各調査対象地周辺の地域史研究についても確認し、各村落・地域に関する情報を共有、豊富化する予定であったが、この分野の総括が特に不十分であると感じている。 しかしながら、研究グループ内で定期的に集まり、研究会を行ってきたことにより、情報の共有、研究内容の確認、問題関心の共有、進捗状況の共有、課題の確認等は、十分に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も引き続き資料調査を行う。同時にデーターベース完成を急ぐ。特に平成30年度は、重要なテーマとして浮上してきた、水辺地域であるという視点、並びに人口、人口移動への視点を重視し、これら両テーマに関連する資料、データの収集、データベース作成に力を注ぐ。ただしデータベース作成は、すでにやや遅れ気味でもあるため、平成30年度は、アルバイト雇用、あるいは業者への外注等を積極的に検討したい。 また平成29年度に引き続き、自給的生業の情報を補完するものとして、口承記録の発掘、古民具の確認・分析を進めたい。 他方、主として平成31年度において国内外の主な学会、セミナー・研究会に参加し、報告したいと考えているため、平成30年度はその準備を行う必要がある。各学会報告のためのエントリー、セミナー・研究会における報告の準備を行う。特に平成31年9月にフランス・パリで開催される予定のRural History 2019に参加し、パネル報告を行いたいと考えている。そのため平成30年度前期に於いては、そのエントリーの準備を行う。エントリーは当然英語で行うため、パネル要旨、報告要旨、報告内容の英文化を進める。そして後期において、上記学会、セミナー・研究会への参加、報告準備を進めるとともに、Rurak Historyの報告準備を重ねて行う。 加えて学会やセミナーにおける報告のみならず、平成30年度においては、調査対象地域の地元地域の人々向けの発表会を開催し、研究成果の地元還元に努める。 年度末には例年同様、年度末研究会を開催し、その現時点での研究総括を行い、研究進捗状況を研究課題参加者全員で確認する。そしてそのうえで、最終年度に向けての研究方針を確認する予定である。
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