研究課題/領域番号 |
16H03656
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
吉村 典久 和歌山大学, 経済学部, 教授 (40263454)
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研究分担者 |
柴田 明 香川大学, 経済学部, 准教授 (10550098)
堀口 朋亨 京都外国語大学, 外国語学部, 准教授 (20568448)
曽根 秀一 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 講師 (70634575)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コーポレート・ガバナンス / 企業倫理 / 同族企業 / 経営戦略 / 日本企業 / ドイツ企業 / オーストリア企業 |
研究実績の概要 |
本年度は、ドイツ及びオーストリアにおける現地調査を精力的に行い、特にドイツでは、4社の同族企業(大企業1社、中小企業3社)からヒアリングを行うことができた。 文献資料については、とりわけドイツの経済倫理・企業倫理の文献を中心として収集を進め、ドイツや、ドイツとほぼ同じ特徴を持つオーストリアの企業倫理や企業統治の動向をチェックした。ドイツのコーポレートガバナンス・コーデックスの最新版においても、「倫理」や「責任」といった用語が登場しており、ドイツやオーストリアの企業統治や経営戦略を考える上で、企業倫理の側面は不可欠のものと考えられる。 また、今回の研究協力者である、ベルリン経済法科大学のジルケ・ブスタマンテ(Sikle Bustamante)教授、ライプツィヒ経営大学院のアンドレアス・ズーハネク(Andreas Suchanek)教授、ウィーン経済大学のゲルハルト・シュペックバッヒャー(Gerhard Speckbacher)教授を訪問し、ドイツ並びにオーストリアの同族企業・中堅企業の企業統治と経営戦略の関連に関する概要、ドイツやオーストリアにおける同分野の研究状況について協議し、今後の調査企業の選定に関して意見交換を行った。とりわけ、周知の通りドイツは企業形態が複雑であり、同族企業や中堅企業は成り立ちや同族の創業理念などに基づき、様々な企業形態を採用していることから、その点に留意して作業を進めていく必要がある。またドイツ・コーポレートガバナンス・コーデックスの最新改訂についてズーハネク教授から、オーストリアの中小企業に関してシュペックバッヒャー教授から、幾つか示唆的な事例が示唆された。 その結果として、目に見えるものとしては、論文2本、発表5回の成果を挙げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査(日本語、英語、ドイツ語)、現地企業調査(ドイツ)、ネットワークの形成(ドイツ・オーストリア)ともに順調に進展している。 平成28-29年度の目標としている、①各国の同族企業を研究戦略に基づいて抽出し、複数回にわたる聞き取りを実施する。聞き取りでは、当日の討議内容だけで満足することなく、継続的に資料の提供を求める。②企業統治の実態、意思決定のあり方、共同決定制度の機能性、経営戦略の策定過程などを調査する。これらの2点のうち、①については、4社とのやり取りが行われており、②については、公表資料、報道資料、データ会社から購入した資料を基に検証を行っている。 十二分な活動ができたため、初年度にも拘らず、論文2本、発表5回の成果を挙げることができた。国際学会で2回発表したことで、本研究課題の推進のため適切な助言を得ることができ、研究内容の質を高めると同時に、国際共同研究を進めていくのに多いに寄与した。 上記から総合的に判断して順調に進展していると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、ドイツ企業並びにオーストリア企業に対するヒアリングに力を入れる。 我が国において、オーストリアの中堅・同独企業の研究はほとんどなされていないが、オーストリアの4%台の低い失業率は、オーストリアの中堅・同族企業が、小さな国内市場規模という不利な環境を乗り越えるために行った経営戦略の結果だと考えられるので、大企業があまり存在しない同国の調査をすることで、ステークホルダー志向の経営を行っている日英独の中堅・同族企業の差異が判明することが期待される。そのため日英独墺で制度面での近似性が高い、機械・部品産業に対するヒアリングを特に重視する。 また、国内外での発表を積極的に行い、本研究に対する助言を得ることも重視したい。特に最終目標である英文での研究成果の公表のために、海外の研究者から研究内容に対する指摘を積極的に受けるようにしたい。それらの知的活動の成果として、これまでの成果を海外の著名な学術誌に投稿するようにしたい。 また、可能であれば、共同成果を出版するために、海外の出版社とも話し合いを開始したいと考えている。
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