研究課題/領域番号 |
16H03662
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
三和 裕美子 明治大学, 商学部, 専任教授 (10287881)
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研究分担者 |
國島 弘行 創価大学, 経営学部, 教授 (00195471)
野中 郁江 明治大学, 商学部, 専任教授 (10290983)
高久保 豊 日本大学, 商学部, 教授 (20246804)
岩波 文孝 駒澤大学, 経済学部, 教授 (40258637)
平澤 克彦 日本大学, 商学部, 教授 (70181154)
佐藤 猛 日本大学, 商学部, 教授 (70287572)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | もの言う株主 / アクティビストファンド / プライベートエクイティ・ファンド / コーポレート・ガバナンス / コーポレートガバナンス・コード / スチュワードシップ・コード / ESG |
研究実績の概要 |
本年度は、日本、ブラジル、中国、英国現地調査を行った。現地では、投資ファンド、投資顧問会社、規制当局などを訪問し、ヒアリング調査を行った。わが国においては、主要な機関投資家と企業へのヒアリングを行い、機関投資家と企業のコーポレート・ガバナンスコード、スチュワードシップ・コードに対する認識、取り組みにギャップを確認した。企業は自身の取り組みを評価している一方で、機関投資家の評価はそこまで高くないことが分かった。 英国における調査では、ファンドなどの機関投資家が企業に対するエンゲージメントをする際に、ESGに積極的に取り組んでいることを確認した。フランスにおけるファンドは、以前より「株主価値重視」ではないことが分かり、日仏ファンドの比較では日本のファンドは「株主価値重視」に向かいつつあるという非常に興味深い結果が得られた。米国・ブラジル調査においては、企業のM&A、プライベートエクイティ・ファンドのバイアウト投資が企業に及ぼす影響について調査を行った。 日本における投資ファンドと企業への影響については、昨今のコーポレート・ガバナンス改革の分析と「株主価値極大化」経営への影響について明らかにした。また、外国人投資家が日本のペイアウト政策および雇用に及ぼす影響に関する分析を行った。特に近年日本でも問題となっている「物言う株主」などのアクティビストファンドが配当増額や自社株買いを要求していることに注目をし、従業員の利益とどのような関係にあるのかについて、実証分性を行った。株主利益と従業員利益はトレードオフかという問いについては、株主利益である配当と従業員利益である雇用がトレードオフ関係にあることから、株主利益と従業員利益はトレードオフ関係にあることが示唆された。 日本比較経営学会、アジア経営学会、JSAファンド研究会、証券経済学会などで関連テーマについて学会報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、おおむね順調に進展しているといえるが、中国、ドイツに関しては調査がやや遅れている。中国については、投資ファンド関連の資料が入手が容易ではないことが要因である。また、ドイツについては現地調査や資料をもとに今後さらに詳しく検討する必要がある。 当初予定していなかったが、英国に関する現地調査が行えたことは収穫である。現地の投資ファンドや規制当局などにインタビューを行うことができた。また、日本における投資ファンド、とくに外国人投資家の持ち株比率、ペイアウト政策、雇用との関連について実証分析を行えたことは大きな進展である。さらに、わが国のコーポレートガバナンス改革に関する分析、特に米国との関連に関する分析は重要な貢献であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究も今年度が2年目、来年度が最終年度に入る。本年度進捗が遅れ気味であった中国、ドイツに関してより詳細な調査、分析が必要である。また、フランスについても投資ファンドが企業に及びす影響についてより詳細な検討が必要である。 今後の方向性としては、特にわが国企業の実質株主を特定し、投資ファンドの質的要因を考慮した企業への影響について分析する予定である。これらの研究の成果を内外関連学会などで報告し、また論文として公表していく。さらに、共同研究者のそれぞれの成果をまとめた書籍などの公刊も検討していく。
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