研究課題/領域番号 |
16H03671
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
正司 健一 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70127372)
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研究分担者 |
水谷 文俊 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (60263365)
三古 展弘 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (00403220)
酒井 裕規 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (20612336)
水谷 淳 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (60388387)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Sustainable Transport / 交通政策 / 公的規制 / 社会的費用 / 私鉄 / 交通行動 / クルーズ船 / 交通論 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、持続可能な交通について、これを実現するための制度設計を中心に分析を進めることで、同分野の研究発展に資するとともに実践的課題解決へつなげることをめざしている。中間年度にあたる29年度の具体的成果は下記の通りである。 海外ジャーナルに採択された研究では、日本の高速道路の外部費用(交通事故、大気汚染、騒音、地球温暖化、交通渋滞)の推定を行った。この研究から得られた主な結果としては、まず、交通量が増加するにつれて外部費用が加速度的に増加すること、外部費用でもっとも大きな要素は交通混雑で、約53%を占め、その次に大きな要素は交通事故と大気汚染であることを示した。さらに車両別にも推定を行い、同じ1台あたりではバスは通常の自動車の約18倍になること、また高速道路ネットワーク全体の外部費用は日本のGDPの約0.2%、約8,200億円にのぼること等を明らかにした。これらは、持続可能な交通に関する制度設計にとって、この社会的費用をどのように利用者に負担させるかの検討においての重要な情報となることはいうまでもない。さらに交通サービスのようないわゆる公共性があると考えられているサービス供給における公民の役割分担、わが国地域旅客鉄道の現況と政策課題について検討した論文が、それぞれ国際共著図書に収録された。 これら以外にも、わが国私鉄について、企業グループ戦略と規制制度の関係、グループ内での出向の役割に関する研究、JR貨物の線路使用料に適用されているアボイダブル・コスト・ルールに関する検討、インバウンドが注目されているなかのクルーズ船の社会的費用ならびにその経済効果の分析、移動手段選択行動における所要時間信頼性といった定性的要素の影響を定量的に把握する研究等も推し進め、それぞれ一定の成果を得、その一部を後に示すように、国際学会や論文等の形で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画の研究プロジェクトの中間年度として、当初計画していた課題に関する研究がおおむね順調に進んでいることは、13本の論文を公表できている(ディスカッションペーパー1本を含む)ことからも明らかである(研究発表欄を参照のこと)。この成果は、昨年度に比べると全体でも、査読付き論文数の点でも大幅に増えている。さらにこれに加えて、2本の国際学会報告(うち1本は招待講演)、1件の国際研究集会の開催を行っているように、国際的研究交流にも努めており、この点からしても本研究課題の進捗状況はおおむね予定通りと判断できる。本研究プロジェクトの最終年度にあたる平成30年度においては、当初計画通りこれまでメンバーが連携をとりながら行ってきた各研究をさらにおしすすめ、その成果を統合することで、所期の目的を達成することが可能になると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画を踏まえ、2年間の研究成果をベースにさらに研究を進め本課題の目的達成をめざす。 例えば、政策的にも課題となっている環境面に関する持続可能性については、構築してきたモデルに基づいて社会的費用の分析をさらに進めるとともに、われわれが行ってきた公的規制制度と交通事業の関係についての分析と統合を図り、持続可能な交通の制度設計につなげる。これらの分析にとっても重要な要素となる交通行動モデルについては、着座可能性といったこれまでその重要性が指摘されながら必ずしも定量的に補足されていなかった要素に関する分析を進める。さらに、サービス生産のみならず設計においても自立的交通事業者の判断に委ねることの価値に理解が広がっているが、交通事業者の持続可能性の検討にとってもわが国私鉄は貴重な存在であり、その能力を活かすことのできる制度設計上の課題について、これまで行ってきたビジネスモデルに関わる分析を通じて明らかにしていく。そしてメンバーが相互に連携しながら進めてきた研究成果をベースに、持続可能な交通を実現するための制度設計についての総合的検討を多面的に行う。 さらに、本年7月には英国リーズ大学から本分野の第一人者を招いて国際的視野からのコメントを受けるとともに、欧州における最新の動向について意見交換を行うことが決定している。以後も国際学会を始めとした各種の研究集会に積極的に参加し、その研究成果を発表するとともに、本分野における各国の専門家との議論を積み重ねる。 最後に、本プロジェクト3年間の研究成果をとりまとめ、最終報告書を作成するとともに、今後の研究進展へ向けた研究課題を導出する。なお、海外ジャーナルをはじめとした各種媒体にこれらの研究成果を公表することはもちろん、交通政策、まちづくり等の政策議論の場にも積極的に参画し、実務面での貢献も行う。
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