研究課題/領域番号 |
16H03673
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
加藤 一誠 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (60290269)
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研究分担者 |
後藤 孝夫 近畿大学, 経営学部, 教授 (60435097)
加藤 浩徳 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70272359)
吉田 雄一朗 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (70339919)
水島 治 武蔵大学, 経済学部, 教授 (70345445)
米崎 克彦 同志社大学, ライフリスク研究センター, 研究員 (70599183)
手塚 広一郎 日本大学, 経済学部, 教授 (90323914)
石坂 元一 福岡大学, 商学部, 教授 (60401676)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 特別目的会社(SPC) / プロジェクトファイナンス / 公共オーソリティ / レベニュー債 / 二面性市場 / オープンスカイ / レベニューマネジメント / 旅客鉄道 |
研究実績の概要 |
交通インフラの運営とそのリスク分担に関して,特にガバナンスやファイナンスという視点からいくつかのことが明らかになった。 1.交通インフラの運営形態であるオーソリティは、州や自治体の破綻から生まれたレベニュー債と同時期に起源をもち、1930年代と第二次大戦後に数を増やしたことも共通である。これは必要性に応じ組織形態やファイナンス手法を編み出し、それを修正しながら現在も使用しているアメリカのプラグマティズムといってよい。こうした組織やファイナンスの研究は断片的に行われているが、2つを結び付けた先行研究は少なかった。最終的にはわが国に対する政策的インプリケーションを導出することを目指し、本年度は帰納的アプローチも加え、具体的事例を集めたいと考える。 2.PFIにおけるSPCの基本的な位置づけを確認し、①SPCがPFIにおいてなぜ設立されるのか、②SPCの設立の必要性や合理性はどのような点に認められるのか、③SPCの設立によってPFIスキームにどのような現象がもたらされるのか、という3点につき主として会社法学的な見地から分析を行った。SPCに関する法理論的分析については、資産流動化法や会社法との関連も含めて必ずしも十分に行われていない状況にある。本年度の研究の意義は、SPCの基本的な分析を行う点にある。 3.航空会社および空港の垂直的関係を基礎とした理論モデルを利用し、オープンスカイ政策の影響を評価する研究を進めた。また空港の二面性に注目したモデルを利用し、空港間競争の理論モデル分析と現実の航空ネットワークの評価モデルの開発を進めた。近年、二面性市場の研究が盛んになっており本研究もその一つとして考えられる。 4.交通インフラへのレベニューマネジメントの導入可能性とその課題について、先行研究が比較的少なくレベニューマネジメントと親和性がある旅客鉄道事業に特に焦点をあて先行研究をサーベイした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果はすでに複数が研究発表として公表されており、交付申請書記載の研究計画としていた作業を完了している。少なくとも交付申請書との関係においては特段の遅れは認められないものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)1930年代と戦後を中心としたレベニュー債とオーソリティの歴史研究を続け、わが国へのインプリケーションを検討する。 (2)欧米を中心に具体的な組織やファイナンス手法の事例を蓄積する。 (3)近時の自己資本規制強化の流れも相まって、PFI(ひいてはSPC)における資金調達の多様化ニーズは今後増大することが予想される。そこで今後の研究は、社債(いわゆるプロジェクトボンド)を利用したファイナンスの可能性を中心として、我が国における利用可能性や利用する際の制度的課題について検討する。 (4)海運運賃市場参加者のリスクへの態度(risk attitude)は観察不能であるが,運賃相場や運賃決定の主な要因の一つと考えられる。そこで本研究では,積荷の市場も考慮に入れた上で,バルク貨物を扱う不定期船市場参加者のリスクへの態度の構造を,データ分析によって明らかにする。
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