研究課題/領域番号 |
16H03677
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
万代 勝信 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (80209709)
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研究分担者 |
松下 真也 松山大学, 経営学部, 准教授 (00771205)
佐々木 隆志 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (10235252)
金 鉉玉 東京経済大学, 経営学部, 准教授 (40547270)
Routledge J. 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (50771268)
河内山 拓磨 一橋大学, 大学院商学研究科, 講師 (70733301)
福川 裕徳 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (80315217)
加賀谷 哲之 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (80323913)
円谷 昭一 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (90432054)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ASEAN諸国の会計・監査 / 会計基準のコンバージェンス / 監査基準のコンバージェンス |
研究実績の概要 |
本研究は、過去10年間に高い経済成長を見せており,今後,世界の「開かれた成長センター」となることが期待されているASEAN諸国の会計および監査に関する法制度・基準・実務について比較を行うことを通じて、会計および監査のグローバライゼーションのプロセスを明らかにするとともに、ASEAN諸国に進出している日本企業が直面している課題を識別することにある。 本年は、ASEAN諸国のうち、特にインドネシアとフィリピンに焦点を当てて調査を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 まず、インドネシアにおいては国際会計基準との間でアドプションではなく,コンバージェンスの手続きがとられている。現在のインドネシアでは,高いレベルで国際会計基準へのコンバージェンスが進んでいる。この調査によって,5種類15領域の差異が明らかになったが,これらの内,金融商品会計及び収益認識の2領域を除くすべての差異が重要なものではないか,今後解消することが決定している差異であった。 一方、フィリピンについては、フィリピン公認会計士協会、アテネオ・デ・マニラ大学、フィリピン最大の会計事務所であるSGV(EY)、準大手会計事務所、フィリピンを代表する企業であるAyala社、日本企業の現地法人であるTeam Energy社を訪問し、それぞれの代表者に対するインタビューを実施し、会計および監査を巡る法制度、会計・監査基準、実務に関する調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね当初計画したとおりに進捗している。有効かつ効率的に研究を遂行するため、前年度においては、(1)ASEAN諸国の会計・監査を巡る制度および基準を調査し、相違点を識別するとともに、実務に対するそのインプリケーションを考察するグループ、(2)ASEAN諸国に進捗している日本企業の実態に焦点を当て、直面する会計問題を明らかにするとともに、その原因およびそれがもたらす帰結について分析するグループ、(3)監査およびコーポレートガバナンスの制度的位置づけや責任、期待される役割に着目しながら、その機能や帰結の違いについて分析するグループの3つのサブグループを設け、それぞれのグループが自律的に研究に取り組むとともに、その研究成果をグループを超えて共有することを目的としたミーティングを開催したり、オンラインストレージを活用して入手・作成した資料等を共有したりしている。 平成29年度においては、平成28年度に実施したインドネシアおよびタイにおけるインタビューを含む現地調査によって収集した情報・資料等に基づいて両国に対する分析を深めるとともに、同様の現地調査をフィリピンでも実施した。これを通じて、各国の制度的展開および実務上の課題を探求するのに必要な情報・資料は着実に収集できている。 企業実態分析グループおよび監査・ガバナンス実態分析グループの研究は、主としてデータベース(Capital IQ)から得られるデータを用いて実施している。インドネシア、タイ、フィリピンの会計・監査基準上の特異性、国際基準との相違点に着目して、それがどのような影響を財務情報に与えているのかに関する予備的な分析を進めている。ただし、これまでの調査を通じて、監査報酬といった分析を行う上で収集を予定していたデータが多くのASEAN諸国では入手できないことが判明しており、代替的な変数の利用について検討している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究においては、インドネシア、タイ、フィリピンの3カ国を主要な調査対象としてきた。これにマレーシアを加えることとする。すでに調査を行った3カ国と同様に現地調査を行い、情報・資料等を入手・収集することを計画している。なお、これら4カ国以外のASEAN諸国については、経済発展の程度が異なることから比較対象とするには適切ではないと判断し、調査対象に含めないこととした。それに代えて、オーストラリア、韓国といったアジアパシフィック地域の主要国やアメリカをASEAN諸国との比較対象として取り上げることを検討している。 すでに入手・収集した情報・資料等からは、ASEAN諸国間において、会計・監査の歴史的な発展のプロセスや、国際基準への対応の姿勢に大きな違いがあることが判明している。また、制度や基準の運用面でも各国において重要な差異が見られる。さらには、財務情報の質を担保する機能の果たしている財務諸表監査を実施する主体である会計事務所のあり方や監査市場の状況についても、各国の特徴が見られている。 これらを受けて、今後の研究において実施すべき研究の方向性として以下の2つがあげられる。第1は、これまでに国ごとに検討してきた制度や基準の状況に基づいて、比較研究を行うことである。そこでは、識別された相違や特徴がどのような要因・背景によってもたらされたのか、それが実務上どのようなインプリケーションを有するのかを明らかにすることを目指す。特に、ASEAN諸国間で比較することに加え、それ以外の国(日本、アメリカ、オーストラリア、韓国)と比較することを通じて、ASEAN諸国全体としての特徴も明らかにできるものと思われる。第2に、そうした違いが財務情報にどのような違いをもたらしているのかを探求するため、特にアクルーアルをはじめとする利益の質に着目した実証分析を行う。
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