研究課題/領域番号 |
16H03681
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松尾 貴巳 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (80316017)
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研究分担者 |
柴 健次 関西大学, その他の研究科, 教授 (40154231)
柳川 隆 神戸大学, 先端融合研究環, 教授 (60247616)
角松 生史 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90242049)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 公会計制度 / 行政管理 / 業績管理 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、当初計画した以下の事例調査等を実施するとともに、質問票調査の調査票を設計・実施した。 自治体における業績管理情報の利用実態について、平成29年9月に国際学会(EGPA)において報告を行い論文としてまとめた(現在投稿中)。また、スペインで開催された国際学会(AECA)において報告を行うとともに、欧州諸国の取組み状況について情報収集を行った。アングロサクソン系諸国が負債の評価を重視しているのに対して、日本やドイツなどの欧州大陸系諸国では資産の有効活用に焦点を当てており、情報活用の重要な論点の一つを明らかにできた。また、平成30年3月には、公会計と予算の関係について、ロンドンのCIPFA(the Chartered Institute of Public Finance and Accountancy)本部、IASB及びThe IFRS Foundation本部、そしてKPMG UKを順次訪問し、インタビューを行い関連資料を収集した。 国内の事例調査では、兵庫県伊丹市において、新公会計情報の実務への活用方法について共同研究を行い、いくつかの事業について固定資産台帳や行政評価情報等の実務データに基づく分析・検討を行った。また、新公会計制度の導入への対応として、予算編成時において複式簿記・発生主義の考え方に基づく仕訳入力処理を行う特徴的な事務手続きを行っている奈良県香芝市、群馬県富岡市にインタビュー調査を行い、実務的な背景、具体的な手続きの内容等についてインタビュー調査を行った。また、予算時仕訳入力処理の会計実務を自治体に支援している監査法人へのインタビュー調査を行った。 文献研究については、規制緩和による自治体業務のアウトソーシングや民営化、特区制度に関する将来的な発展可能性と、意思決定における情報活用、アカウンタビリティ、法的諸問題に関わる課題について整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に実施予定であった質問票調査を平成29年度の実施に変更したが、その結果、調査研究プロジェクトの成果を一部活用することができ、また平成29年度に実施した国内外の事例調査結果を反映することができた。ただし、当初の計画に加え、発生主義予算、アセットマネジメントにおける意思決定やアウトソーシングにおける管理など具体的な問題についてより深い検討を行う必要があることがわかったため、これらの課題については事例研究や自治体との共同研究を通じて重点的に調査、分析を行うこととした。 自治体との共同研究においては、大阪府吹田市、兵庫県伊丹市については順調に検討が進んでいる。茨城県常総市や八尾市、神戸市とも検討を行ってきたが、新しい管理方法や試行的導入に向けた取組みは検討段階である。このため、平成30年度前半までに具体的な取組みの可否について協議する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、平成29年度までに実施した文献研究、国内外事例研究に基づき、会計学、法学、経済学的の各学術的論点と実務的課題について整理する。また、質問票調査の分析を行い、定量的な示唆を得る。質問票調査の分析をより迅速かつ効果的に実施するため、分析においては、大浦啓輔准教授(立命館大学)などの研究者の支援を得る。 共同研究を実施してきた兵庫県伊丹市、大阪府吹田市など(可能であれば常総市や神戸市)と連携し、予算編成、事業評価や実施計画における会計情報活用の新たな方法について検討する。具体的には、事業評価における行政コストの計算、表示方法、予算編成段階における発生主義に基づく行政コスト情報の作成・利用、アウトソーシングの意思決定・管理における情報活用、公共施設管理における独自の耐用年数に基づくコスト情報の開示のあり方などについて実験的な検証を通じてその効果、課題等を検討する。 平成30年度までの研究成果について取りまとめを行い、その成果を、セミナー、シンポジウムを通じて公表するとともに、成果報告書としてまとめる。
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