研究課題/領域番号 |
16H03684
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
朴 大栄 桃山学院大学, 経営学部, 教授 (80157114)
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研究分担者 |
異島 須賀子 久留米大学, 商学部, 教授 (20336069)
深井 忠 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (30400211) [辞退]
小澤 義昭 桃山学院大学, 経営学部, 教授 (40570205)
宮本 京子 関西大学, 商学部, 教授 (50407334) [辞退]
松本 祥尚 関西大学, その他の研究科, 教授 (30219521)
井上 善弘 香川大学, 経済学部, 教授 (60253259)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 監査報告書 / Key Audit Matters / Critical Audit Matters / 情報提供機能 / 意見表明機能 / 二重責任の原則 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、監査報告書の長文化を提起する「最も重要と考える事項(KAM/CAM)」の記載要請を取り上げ、監査報告書記載内容に関する実験研究と質問票調査をベースに、インタビ ュー調査による補正を加えることによって、監査人・利用者・被監査側の関係者すべてが受入可能かつ実行可能な監査報告書変革のあり方の提示を行うことにある。 初年度にあたる平成28年度は3回の全体研究会を開催するとともに、平成29年度に予定している本格的アメリカ調査の準備としてErnst & Young San Jose, San Francisco両事務所で予備調査と資料収集を行った。研究会では下記の諸点に関する個々の研究成果の報告を受けるとともに、次年度調査・実証研究を控えて成果の共有を最大の目的とした。 1.国内外におけるこれまでの標準監査報告書(監査報告制度)改訂の動機・背景の分析。2.改訂の方向性として、監査意見の簡易化の一方、概要区分の詳細化、情報提供区分の拡大等が行われてきたが、それらの改訂と監査報告書の情報価値の向上との理論的整合性についての調査・分析。3.監査報告書の情報提供機能の発現である補足的説明事項・特記事項・追記情報等を巡る議論の渉猟と分析。4.監査報告書の情報提供機能と二重責任の原則との齟齬の観点から、二重責任の原則の意義ならびに監査理論や制度における位置づけを解明。5.IAASBやPCAOBなどが公表した監査報告書変革に関する報告書・公開草案等の渉猟・分析を通じて、監査報告書長文化の動機と意味を探るとともに、監査判断において「最も重要と考える事項(KAM/CAM)」の現状を把握。6.英米の先例を中心とした海外監査報告書の実態調査を進めるとともに、わが国における今後の監査報告書標準様式の改訂に対する示唆の修得
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、次の二つのステップを踏んで研究を進めることとしていた。 (1)国内外の監査理論研究の分析による監査報告書のあるべき様式の提示に注力する (2)監査報告書の実態調査に基づく監査報告書記載内容と記載方法についての仮説構築を進める。 いずれも今年度に引き継がれる研究課題であるが、監査報告書の発展形態ならびに二重責任の原則との関係の分析などを通じて、過去の理論研究の渉猟ならびに理論の共有は終えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降は、「仮説検証のための実証的研究(実験研究・質問票調査)」に集中的に取り組む。平成29年度は、実証的研究の準備として、平成28年度の研究テーマとした監査報告書の効果・受入可能性についての研究を進めるとともに、8月に予定するアメリカ公的機関ならびに会計事務所に対するインタビュー調査を実行し、実験研究ならびに質問票調査の内容を確定する。なお、アメリカでのインタビュー調査は、同国で長期実務経験を有する研究分担者の小澤のネットワークを活用して実施する。 ついで、監査実務に携わる大手監査法人の公認会計士300人(日本:200人、アメリカ:100人を予定)と利用者200人(日本証券アナリスト協会会員、機関投資家など)をそれぞれ被験者とする二つの実験をおこなう。〔実験A〕監査人は、KAM/CAMとしてどのような情報内容を記載すべきであると意識しているのか。〔実験B〕提供される情報内容の違いは利用者の企業に対する理解度や意思決定にいかに影響するのか。また、両実験共通事項として、重要な虚偽表示リスクの程度が異なる架空のクライアント2社を設定して実験を実施する。 実験Aでは、ケースとして財務諸表、主要財務指標、事業環境情報等を提示し、それぞれについて、監査人が監査報告書に記載すべき事項をどのように判断するのか、監査人の判断の違いの重点がどこにあるのかを共分散構造分析など統計的手法により検証する。実験Bでは、実験Aから得られた監査報告書を類別化し、被験者をランダムに割り当てることによって、利用者の認識がどのように異なるのかを分散分析により検証する。 以上の実験に質問票調査を加えることにより、①「情報提供機能と意見表明機能ならびに二重責任との関係性」を解明する手がかりを提示し、②「受入可能かつ実行可能なあるべき監査報告書の方向性」を客観的な証拠に基づき帰納的に導出する。
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