研究課題/領域番号 |
16H03688
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有田 伸 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30345061)
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研究分担者 |
多喜 弘文 法政大学, 社会学部, 准教授 (20634033)
永吉 希久子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50609782)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会階層 / 不平等 / 社会学 / 国際比較 / 正当化 |
研究実績の概要 |
本研究は,日本社会における就業者間の報酬格差が,どのように,またどの程度正当化され,ひとびとに受容されているのかを,格差の実態自体とともに,国際比較の観点からあきらかにしようとするものである.研究期間の2年度目となる2017(平成29)年度には,主に(1)前年度に行った第1次プリテストデータの分析,(2)ヴィネット調査の実施方法に関する文献サーヴェイと検討,(3)具体的な質問項目の検討と第2次プリテストの実施等の諸課題にあたった. まず,(1)前年度に,3つの異なる方法を併用して実施した第1次プリテストのデータ分析を通じ,ひとびとの考える具体的な就業者の「適正所得」を適切に捕捉するための方法を確定することができた.またヴィネット調査によって得られた適正所得回答のデータ構造と分析方法についても習熟することができた.(2)ヴィネット調査の実施方法に関する文献のサーヴェイと検討を通じては,適正所得を尋ねる仮想就業者ヴィネットを,その構成要素のすべての組み合わせの中から絞り込む方法を確定することができた.さらに(3)本調査で尋ねるべき具体的な質問項目についての検討作業を進め,それに基づき,本調査の予備調査としての性格を持つ第2次プリテストを実施した.これらを通じて,2018(平成30)年度に実施予定の国際比較調査(本調査)の準備は十分に整ったといえる. このほか,報酬格差とその正当化に関する各自の研究成果を,国内外の学会等において報告し,本研究プロジェクトに対する関心を喚起した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,「適正所得」に関するヴィネット調査データの分析とその成果の発表は,2018(平成30)年度においてはじめて可能となる予定であったが,前年度に前倒しして実施した第1次プリテストデータを集中的に分析することで,ヴィネット形式による適正所得の調査とそのデータの分析方法に関して一定の知見を得ることができた.これに基づき,当初の計画に1年先んじて,3つの学会報告を行うことができた.このほか,調査対象者に提示するヴィネットの絞り込み方法について,この分野の第一人者であるドイツ人研究者と直接議論し,助言を受ける機会を得たことなどにより,調査の実施方法についても当初の計画以上に知見の蓄積がなされた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題としてまず挙げられるのは,2018(平成30)年度に予定している国際比較ヴィネット調査の実施である.このために具体的には,(1)2017(平成29)年度に実施した第2次プリテスト(予備調査)のデータ分析を進め,質問項目に改善の余地がないかを検討し,調査票を確定させる.(2)必要に応じて国外の専門家の助言も得つつ,望ましい調査方法を確定させる.(3)ネイティブスピーカーによるチェックを経ながら,調査票の翻訳を行う.また調査会社とも緊密な連携を取りつつ,国際比較調査を遺漏なく行う. 2018(平成30)年度には,得られた国際比較調査データの分析を集中的に行い,適宜国内外の学会・研究会において報告する.さらに2019(平成31)年度には論文等の形で成果をまとめ,公表する. このほか,各自が行っている報酬格差研究をより一層推し進めるとともに,その成果を積極的に国内外の学会・研究会において報告し,論文等の形で発表していく.また関連する国外の研究プロジェクト関係者との連携にもつとめ,適宜情報交換と議論を重ねていく.
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