研究課題
本研究は,日本社会における就業者間の報酬格差が,どのように,またどの程度正当化され,ひとびとに受容されているのかを,格差の実態そのものと共に,国際比較を通じて明らかにしようとするものである.研究期間最終年度となる令和元年度には,前年度に実施した国際比較ヴィネット調査データの分析をさらに進め,その成果を国内外の学会で発表した.さらにこれらに基づいた成果論文を執筆し,国際学術誌への投稿準備を進めた.これらの分析を通じては,米国では性別や雇用形態に伴う適正所得の格差が認められないのに対し,日本や韓国では明瞭な形でそれが認められ,さらに日本では不利な立場にある人々によってそれらの格差がより強く受容されているという事実を明らかにした.また日本社会における「非正規就業者による正規/非正規雇用間格差の過剰受容」は,日本型雇用慣行の下で形成される正規/非正規雇用間の就業上の義務や訓練機会の相違に関する想定によって一定程度説明されることを示した.これらの成果に基づき,本研究の成果をとりまとめた科研費報告書を3月に刊行した.これらの研究成果は,関連分野において概して肯定的に受け止められており,国際学会報告論文は当該分野の最優秀論文賞(2019 FFJ/SASE Award for the Best Paper on Asia)を受賞するなど,日本発の比較社会学の成果として国際的に高い評価を受けた.また科研費報告書に収録した調査実施過程の記録(SARI調査の概要とプロセス:国際比較ヴィネット調査をどのように設計し,実施したか)は,世界的にも類例の少ない国際比較ヴィネット調査のノウハウを示しているという点で,調査方法論の面でも貴重な研究成果と言える.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (5件)
Sustainability
巻: 11 ページ: -
https://doi.org/10.3390/su11236683
FFJ Discussion Paper
巻: #19-02 ページ: -