研究課題/領域番号 |
16H03704
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
的場 信樹 佛教大学, 社会学部, 教授 (20283088)
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研究分担者 |
山本 奈生 佛教大学, 社会学部, 准教授 (00625006)
林 隆紀 佛教大学, 社会学部, 准教授 (20264806)
大束 貢生 佛教大学, 社会学部, 准教授 (20351306)
田村 有香 京都精華大学, 人文学部, 准教授 (50330030)
近藤 敏夫 佛教大学, 社会学部, 教授 (70225621)
清水 陽子 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (70457133)
大藪 俊志 佛教大学, 社会学部, 准教授 (80635607)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人口減少社会 / 持続可能性 / 地域モデル / ローカルガバナンス / ソーシャルキャピタル / 地域住民自治組織 / ソーシャルイノベーション / 地域経済循環 |
研究実績の概要 |
【現地調査の実施内容】本研究は「人口減少社会における持続可能な地域モデルの構築」を目的とし、平成29年度はこれをブレイクダウンして、基礎自治体(一部を除く)における政策過程を対象に、生活の質の向上と地域住民自治組織の機能という目的=手段関係に注目した実証研究を行い、京都市右京区宇津地区、京都府南丹市美山町、愛知県高浜市、高知県梼原町、北海道下川町、熊本県小国町、沖縄県宮古島市において現地調査を行った。 【研究成果】その結果、人口移動と地域住民自治組織の機能変容によって媒介された地域経済循環、国の補助事業獲得のための権能をめぐる環境循環、産業クラスタの発展と計画的原料供給システム循環、SDGs(住環境改善からの低炭素)による生活の質の向上を目的とする環境循環、再生エネルギーのベストミックスと消費量の平準化技術をめぐる環境循環といった類型化が得られた。 【研究成果の意義】これらの研究によって、諸類型を横断する共通要素としてローカルガバナンス(権限と能力)、ソーシャルキャピタル(信頼)、地域住民自治組織(政策主体の形成)、ソーシャルイノベーション(指向性)の存在が明らかになり、一部に共通する二次的要素として、環境、技術、経済などのシステム構造を確認できた。これは学術研究と政策をつなぐ《問題構造の把握と政策形成の間を媒介する枠組構築や方法論》の改善に寄与するものである。 【残された課題】平成29年度は、京都市南丹市美山町、高知県梼原町での調査において、人事異動による担当者の不在、町長選挙などにより一部実施できなかった計画があったので、平成30年度に補足調査を行い、先述した諸要素とそれらの諸連関をより詳細に明らかにすることによって、本研究の目的である理論モデルの構築を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【平成28 年度の計画と進捗状況】平成28年度の計画は、ローカルガバナンスとソーシャルキャピタルに関する先行研究の探索を行い、当該地域に関する先行研究、地誌などの歴史資料、統計資料を収集し、第1 次調査と補足として第2 次調査を実施することによって、本研究の分析枠組の妥当性を検証することを目的としていた。この計画に対して、ソーシャルキャピタル論に関しては政策主体の形成に向けた契機を導入することによって補完すること、対象地域を追加して多角的に地域住民自治組織の調査と類型化を行うことの必要性が確認される一方、異常気象による北海道下川町調査の延期、日程調整の遅れによる京都府南丹市美山町調査の順延など現地調査の進捗に遅れが生じた。 【平成29 年度の計画と進捗状況】平成29年度は、研究のまとめに向けた準備段階と位置づけ、繰延された現地調査を実施すると伴に調査結果のデータ処理や加工を行い、チームごとに中間報告をまとめて第三者からの評価も受け、研究成果の客観化に努め、資料や研究ノートをワーキングペーパーとして蓄積することを計画とした。これに対して、平成29年度は、前年度調査の繰延分(京都府南丹市美山町、高知県梼原町)に加え、熊本県小国町、沖縄県宮古島市の調査を実施し、現地調査は一部を除いてほぼ計画通りの進捗をみた。本年度は8回の研究会を開催し各チームから中間報告が行われたが、外部の第三者を招聘した研究会の開催は1回にとどまり、研究成果の客観化については遅れが生じた。資料及び研究成果の蓄積(学会報告・学会誌への投稿)はほぼ計画通り行われた。 【現在までの進捗状況】以上のように、一部調査実施の遅れや研究成果の客観化に遅れが生じたものの、研究の根幹部分では計画通り進捗しており、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
【平成30 年度の推進方針】本研究の最終年度である平成30年度は、研究成果のまとめと出版に向けた準備を行う。研究仮説の検証、根拠資料の整理、執筆の分担と調整のために研究会を開催する。研究会は公開し、第三者からの評価を受ける場とする。研究会では、各チームから報告を行い、資料を蓄積する。出版に向けて、研究成果を正確でわかりやすくすることに努める。出版は31 年度の刊行を目指す。必要に応じて補足調査を実施する。 【4~7月の計画】平成30年4月30日までに、研究の表題、対象とする事例、「モデル」(研究の理論的枠組)を各自が申告し、5月、6月の研究会を経て7月24日の研究会で出版物のコンセプト(対象となる事象、カテゴリー・ジャンル、企画の動機・理由、ベネフィット・インプリケーション)、目次(章別構成)、執筆分担者を確定する。 【6~8月の計画】以下の4地域で5つの調査を行う。①高知県梼原町の「補助金が地域住民自治組織と主体形成に及ぼす影響に関する調査」、②京都府南丹市美山町の「主体形成をめぐる地域住民自治組織とソーシャルビジネス(社会的企業)の葛藤と相互補完性に関する調査」、③京都市右京区宇津地区の「農村コミュニティの変容への地域住民自治組織の対応が主体形成に及ぼす影響に関する調査」、④京都市北区・東山区他の「人口減少を活かせるまちづくりに関する調査」と、⑤「ローカルガバナンスと防災に関する調査」を引き続き実施する。 【8~12月の計画】、8月、9月、10月、11月の研究会において、必要に応じて外部の第三者を招聘して各執筆分担者による原稿の進捗状況に関する報告とその検討を行い、原稿執筆をはじめ出版企画全体の進捗をマネジメントする。12月31日を原稿の締切とし、その後最終的な編集作業を行う。
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