研究課題
当研究は、一般労働市場への統合において不利な条件を抱える人々への就労支援に関する各国の政策動向を、「中間的労働市場」という仮説的概念装置を用いて捉えようとするものである。この課題に関連する分野の各国比較に関する内外の文献研究、研究分担に基づく現地調査、およびこれらの知見を共有しつつ「中間的労働市場」概念を議論する研究会開催を実施しつつ、このテーマに取り組んだ。この研究を通じて得られた知見は以下の諸点である。第一に、90年代には長期失業者就労促進の枠組みでのアクティベーションが中心的に取り組まれてきたが、労働市場が改善した時点でも一般労働市場への包摂が困難な人々に対しては、コーチングを含む寄り添い型の対人支援が各国において強化される傾向がみられた。第二に、長期失業者にはしばしば、精神障害や発達障害等、障害認定を受けていないために適切な支援を受けられていない人々が多く含まれるという認識が広まっていることである。この状況に鑑み、労働市場包摂型社会的企業WISEにおいては、長期失業者支援はしばしば障害者就労支援と共通の枠組みで支援が行われている。第三に、前述の各国動向の背景には、国連障害者権利条約の批准とともに、WHOの国際生活機能分類ICFの政策実装が進められてきていることがある。以前より北欧諸国では障害の線引きよりも不利性の補填に重点を置いた生活・就労支援が行われていたが、権利条約批准国の間にこの動きが浸透しつつある状況が窺えた。すなわち、一般労働市場への参入に不利性をもつ人々という括りで、障害者就労支援と長期失業者就労支援とが政策部面でも合流する可能性が出てきたといえる。その際、これら当事者の就労形態は、閉じた保護的就労から合理的配慮を伴った一般労働市場への包摂へとシフトしていく傾向がみられ、「中間的労働市場」は一般労働市場に包摂されるものに転換していくことが予想される。
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