研究課題/領域番号 |
16H03715
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研究機関 | ルーテル学院大学 |
研究代表者 |
山口 麻衣 ルーテル学院大学, 総合人間学部, 教授 (30425342)
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研究分担者 |
松澤 明美 茨城キリスト教大学, 看護学部, 准教授 (20382822)
中村 裕美 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20444937)
山口 生史 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任教授 (50257127)
小原 眞知子 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (50330791)
廣瀬 圭子 ルーテル学院大学, 総合人間学部, 講師 (90573155)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 介護者(ケアラー) / QOL / 介護者支援 / ケア / 高齢者介護 / 日本語版ケアラーQOL尺度 / 包括的ケアモデル / ケアの質 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ケアラー(家族などの無償の介護者)の生活の質(QOL)に焦点をあて、多面的なケアの質の評価に基づく包括的ケアモデルを、学際的なアプローチにより検討することである。3年目の2018年度は主に次の4点で成果をあげることができた。 1)開発したケアラー用日本語版社会的ケア関連 QOL尺度の信頼性・妥当性・関連要因の検討と多変量解析分析を行った。ケアラーのQOL、ケアと就労との関連や健康との関連などについても分析した。これらの分析した成果を国際学会(アイルランド・米国など)や国内学会で報告し、論文執筆を行った。これまで実施した質的調査とWEB調査の結果を2冊の報告書としてまとめた。 2) ケアラーアセスメント活用モデル開発に向けた取り組みの一環として、昨年度に引き続き、地域包括支援センター(以下、包括)職員対象のケアラー支援に関する量的調査を実施した。包括職員対象の介護者支援研修で調査結果を報告し、アセスメントモデル版をもとに演習を実施し、分析の一部を論文としてまとめた。 3)包括的なケアモデル検討のために、①国際セミナーの実施(香港及び台湾の専門家を招聘。外国人住み込みワーカーや家族ケアラーに関する2回のセミナーを実施)、②国内外の施策・よい実践把握のための文献レビュー及び英国と仏国でのケアラー支援実践の把握、③多面的なケアの質の評価の方法や就労とケアの関連に関する理論モデルの検討、を行った。 4)QOLに焦点をあてたケアラーアセスメント活用モデルの開発のために、ケアラー支援団体や高齢施設等の協力を得た参加型調査(ミックス法適用のアクションリサーチの手法(MMAR)を援用)を行い、ケアラーアセスメントのモデル版の実践評価調査及びケアラーズ・カフェ実践モデル開発の取組を実施した。少数ではあるが障がいのある人のケアラーも対象に実施できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年目の昨年度の進捗状況は以下の理由から、おおむね計画通りであった。 1)開発したケアラー用日本語版社会的ケア関連 QOL尺度については国内外の学会で報告し、論文執筆を行ったが、対応が遅れて一部のみ論文掲載が認められた。また、日本語版社会的ケア関連 QOL尺度の選好ウェイト調査については実施を検討したが、当初予算に含まれていないこともあり、本研究では対応しないこととした。 2)これまで実施したケアラー・支援者対象の質的調査とケアラー対象の量的調査(WEB調査)の結果の分析については、予定通り学会報告をした他、それぞれ報告書としてまとめた。 3)包括的なケアモデル検討のための国内外の施策・よい実践の把握については、文献レビューの他、英国・仏国でのケアラー支援組織の実践を現地にて把握することができた。当初はケアラーや実践者を対象とした追加のインタビュー調査を実施予定だったが、本年度はアセスメント開発の調査に重点をおくこととし、また、地域包括支援センターでの調査を追加実施することとしたため、追加のインタビュー調査は実施しないこととした。また、多面的なケアの質の評価、就労とケアの関連の把握のための理論的な検討は十分には対応できず今後の課題となった。 4)ミックス法適用のアクションリサーチの手法(MMAR)を活用した参加型調査については、複数のケアラー支援団体や高齢施設等の協力を得て、ほぼ計画通り実施することができた。アセスメントモデルの実践評価調査は、実施完了時期が遅延したため、調査結果を反映した修正版モデルについては次年度の課題となった。ケアラーズ・カフェ実践モデル開発については多様な支援者ネットワークの連携は図られたが、ケアラー自身の参画についてはさらなる工夫が課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の今後の推進方策は以下の通りである。 1)ケアラー用日本語版社会的ケア関連 QOL 尺度(自記式)の活用促進のために、更なる論文化、同尺度の実践的活用方法をまとめる。高齢者のみならず障がいのある人のケアラーを対象に活用する方策を整理する。 2) 改訂版アセスメントツールの開発を行い、同改訂版ツールを用いた実践評価調査を再度実施し、その結果を分析したうえで、QOLに焦点をあてたケアラーアセスメントや支援計画(ケアラー版ケアマネジメント)の最終的なモデル版を開発し、その開発プロセスを論文としてまとめる。 3) 国内外の施策・よい実践把握のための文献調査などを体系的整理してまとめる。それらの整理を踏まえたうえで、多面的なケアの質の評価、就労とケアの関連の把握のための理論的な検討を行う。 4)引き続き実践調査を実施し、ケアラーや支援者の参加を促しながら、本研究での成果報告(改訂版アセスメントツール活用に向けたワークショップ開催、パンフレット・報告書作成など)を行う。最終年度であることから、研究全体のまとめを行い、実践への活用の促進をめざす。多領域からのアプローチにより、成果の発信と論文執筆をより積極的に行う。
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