研究課題/領域番号 |
16H03719
|
研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
篠田 道子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (00319302)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 終末期ケア / 多職種チーム / 意思決定 |
研究実績の概要 |
高齢者の終末期ケアマネジメントと多職種チームの意思決定を明らかにする目的で、3つの調査に取り組んだ。 調査1:意思決定プロセスに影響する要因の多面的分析では、意思決定プロセスと多職種チームの関与について、2つの調査を行った。①国内外の文献学的検討により、研究の到達点と課題を整理した。②現地調査(フランス・イタリア)を実施した。フランスでは介護職の資格再編が起こり、医療行為が可能な介護職が誕生し、多職種チームに加わった。さらに、尊厳死法であるレオネッティ法が改正され、事前指示書を義務付けるなど、より丁寧な意志決定がされるようになった。イタリアではボローニャ地域医療公社、癌協会、ホスピスでヒアリング調査を行ったが、いずれも多職種チームによる意思決定を実施していた。両国ともにコーディネーターは医師と看護師であった。 調査2:死亡前2週間の症状マネジメントと多職種チームの役割と機能では、フランス終末期ケア研究センターが開発した調査票を日本語に翻訳し、さらに日本の実情に合わせた項目を追加した。さらに、本調査票の妥当性を確認するため、多職種数名によるプレ調査を行い、調査票を一部修正した。その結果、5領域50項目に整理した。 調査3:終末期ケアの意思決定に資する多職種連携教育プログラム評価では、①多職種参加型の事例検討会を実施した。研修を積んだ助言者数名(薬剤師や看護師等)とファシリテーターがディスカッションをリードし、多面的な意見交換による豊かな事例検討会の方法を試みた。②フランスにおける医療従事者の連携教育プログラムについて、パリ大学医学部のPACES共通課程と、在宅医療・介護サービス会社全国連盟の独自プログラムについてヒアリングを行った。①②ともにプログラムは緒についたばかりであり、評価まで至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢者の終末期ケアマネジメントと多職種チームの意思決定を明らかにする目的で、3つの調査に取り組んでいる。 調査1:意思決定プロセスに影響する要因の多面的分析では、意思決定プロセスと多職種チームの関与について、2つの調査を行っている。①国内外の文献学的検討により、研究の到達点と課題を整理し、現在レビュー論文としてまとめている。②フランス新レオネッティ法と、イタリア癌協会が推奨している意思決定プロセスについては、現在情報収集の段階である。平成29年に現地ヒアリングを予定しているので、これらの知見をまとめ、現状と課題を整理したい。 調査2:死亡前2週間の症状マネジメントと多職種チームの役割と機能では、質問紙を使ってのプレ調査を終了し、調査票を一部修正した。その結果、5領域50項目に整理した。現在は、調査フィールドの確保をしている段階である。現時点で内諾を得ているのは、A県内の特別養護老人ホーム数十か所である。訪問看護や医療療養病床を管轄する団体への調査依頼を継続している。 フランス(パリ・リヨン)での事例調査については、すでにフランス終末期ケア研究センターの内諾を得ている。 調査3:終末期ケアの意思決定に資する多職種連携教育プログラム評価では、①多職種参加型の事例検討会を実施した。研修を積んだ助言者数名とファシリテーターがディスカッションをリードし、多面的な意見交換による事例検討会の方法を試みた。平成28年は試行段階であり、事例の書式や運営方法を再検討している段階である。助言者(薬剤師等8名)については、研究協力への内諾を得ている。②フランスにおける医療従事者の連携教育プログラムについては、大学や職能団体へのヒアリングを継続しているが、わが国と同様に、プログラムは緒についたばかりであり、評価まで至っていないのが現状である。フランス看護協会などヒアリング対象を広げる準備をしている。
|
今後の研究の推進方策 |
高齢者の終末期ケアマネジメントと多職種チームの意思決定を明らかにする目的で、引き続き3つの調査に取り組む。 調査1:終末期における意思決定プロセスと多職種チームの関与については、平成29年は、意思決定場面(カンファレンス・事例検討会)の参与観察とインタビュー調査を行い、平成30年にかけて質的に分析する。その後、意思決定プロセスに影響する要因について、構成要素を抽出し構造化を試みる。調査対象は、特別養護老人ホームや訪問看護ステーション等を予定している。 また、フランスでは、尊厳死法であるレオネッティ法が改正されて1年以上経過することから、改正後の意思決定プロセスの現状と課題について、医療付き高齢者施設等にヒアリング調査を行う。 調査2:死亡前2週間の症状マネジメントと多職種チームの役割と機能では、プレ調査が終了したので、平成29~30年にかけて質問紙調査と事例調査を実施する。調査対象は、特別養護老人ホーム、医療療養病床、訪問看護ステーション等であり、調査にあたっては、所属機関の研究倫理審査を受ける予定である。事例調査は、フランス(パリ・リヨン)とイタリア(ボローニャ)でも実施し、日仏伊比較調査としてまとめる。 調査3:終末期ケアの意思決定に資する多職種連携教育プログラム評価では、平成29年は多職種参加型の事例調査を複数回実施し、平成30年にプログラムを評価する。また、フランス(パリ・リヨン)とイタリア(ボローニャ)の終末期ケアにおける多職種連携教育のプログラムとその評価も継続する。日仏伊の調査で明らかになった多職種連携教育の内容・方法を検討し、有用なプログラムと教材を開発する。
|