研究課題/領域番号 |
16H03719
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
篠田 道子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (00319302)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 終末期ケア / 多職種チーム / 意思決定 |
研究実績の概要 |
高齢者の終末期ケアマネジメントと多職種チームの意思決定を明らかにする目的で、3つの調査に取り組んだ。 調査1:終末期ケアマネジメントの意思決定プロセスと多職種チームの関与について、6つの多職種チームへのヒアリングを行った。その結果、①ガイドラインの利用率は低い、②意思決定の手段としての、事前指示書やACPへの活用状況は低く、カンファレンスを重視している、③疾患や場によって看取りのプロセスは異なるため、一つのガイドラインでは限界がある、④ガイドラインに準拠した工程表が求められていることが明らかになった。 調査2:死亡前2週間の症状マネジメントと多職種チームの役割と機能では、フランス終末期ケア研究センターが開発した調査票を日本語に翻訳して、予備調査を行った。その結果、5領域50項目に整理し、5か所の特養で調査を実施した。現在分析中であるが、調査対象が少ないことから、統計処理に限界があった。次年度は調査対象を増やし、幅広い視点での分析を試みたい。 調査3:終末期ケアマネジメントにおける多職種連携教育の有用なプログラム・教材の開発と評価では、「多職種参加による事例検討会」を4回実施し、評価した。熟達したファシリテーターと助言者を配置し、ディスカッションの活性化を図った。評価項目は①多職種チームに関する新たな気づきや課題はあったか等、5項目を5件法で回答を得た。その結果、全項目の平均値は4.0で、学びの獲得に繋がっていることが示唆された。 イタリア癌協会の緩和ケアに関するヒアリング調査では、①在宅サービスの平均利用期間は132日、患者一人あたりにかかる費用は2,280ユーロであり、これは医療機関に入院した場合の3分の1の費用であること、②ボランティアの人材育成プログラムについて情報提供を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢者の終末期ケアマネジメントと多職種チームの意思決定を明らかにする目的で、3つの調査に取り組んでいる。 調査1:終末期ケアマネジメントの意思決定プロセスと多職種チームの関与について、多職種チームへのヒアリングを実施した。その結果、①疾患別・場所別ガイドラインの作成と、②ガイドラインに準拠した工程表が求められているなど、新たな研究課題が明らかになった。そのため、対象を「がん」「認知症・老衰」「心臓・肺等の臓器不全」の3種類に類型化し、療養支援の現状と課題、多職種チームで活用しているツール等を明らかにする。これまでの研究成果で、意思決定を支えるツールを開発しているので、これらを用いた調査を進めている。 調査2:死亡前2週間の症状マネジメントと多職種チームの役割と機能では、フランス終末期ケア研究センターが開発した調査票を日本語に翻訳した、5領域50項目の調査を実施している。現在調査結果を分析中である。また、調査対象が少ないので、次年度は医療療養病床にも広げていきたい。 調査3:終末期ケアマネジメントにおける多職種連携教育の有用なプログラム・教材の開発・評価では、「多職種参加による事例検討会」を2年間継続している。プログラムの一定の評価は出ているが、詳細な分析には着手していない。今後は調査対象者を増やし、幅広く分析する予定である。 また、フランス、イタリアにおける終末期ケアプログラムと人材育成については2年間継続しているが、資料の分析が不十分である。日仏伊比較にむけて補足調査と情報収集を進めている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
高齢者の終末期ケアマネジメントと多職種チームの意思決定を明らかにする目的で、引き続き3つの調査に取り組む。本年度は研究最終年度であることから、調査1・調査2については、研究内容・方法を統合して進める。 調査1・調査2:終末期ケアマネジメントの意思決定プロセスと多職種チームの関与については、昨年度明らかになった新たな研究課題に向けて、次のような研究内容・方法に変更する。対象を「がん」「認知症・老衰」「心臓・肺等の臓器不全」の3種類に類型化し、療養支援の現状と課題、多職種チームで活用しているツール等を明らかにする。調査場所は在宅、高齢者施設、病院とし、調査項目は調査2で明らかにした、5領域50項目とする。さらに、終末期ケアマネジメントにおける多職種連携を具体的に展開するための支援ツールと指標を類型別に開発・評価し、効果的な運営方法を提示する。 調査3:これまで開発してきたケース教材、DVD、ディスカンファレンスの運営スキル等、多様な教材を組み合わせて、一定期間研修を実施する。多職種連携教育にはリフレクションなどで多職種による価値観の交換が重要なため、プログラムには、訓練を受けたファシリテーターを配置する。評価方法は、研修プログラム開始前に行う「研修前評価」、プログラム終了直後に行う「研修直後評価」、さらにプログラム終了後1~2か月後に行う「研修後評価」の3時点での習得度と価値判断の変化を測定する。 また、フランス、イタリアにおける終末期ケアの多職種チームの意思決定プロセス、人材育成プログラム、教材についてヒアリングを継続し、日仏伊間の分析を行う。 最終年度であることから、①公開研究会を開催し、研究成果を広く公開する。②3つの調査をまとめた報告書を作成する。③フランス・イタリアの終末期ケアにおける多職種チームの意思決定プロセスの比較を行い、わが国への示唆をまとめる。
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