研究実績の概要 |
初年度 (平成28年度) は, 当初の計画通り「SNS利用リスクに対するユーザの社会的認知の解明」について調査研究を遂行した。研究開始後ただちに研究分担者との打合せや研究補助スタッフの雇用など研究体制整備に取り組み, 年度内の調査実施を実現した。具体的には, 大学生100名程度を対象としたSNS利用でトラブルの当時者となる人物に対するステレオタイプ的認知に関する調査を代表者が, 高校生300名程度を対象としたSNS利用トラブルの意識と実態に関するWEB調査を分担者がそれぞれ実施した。これらの調査結果を分析することで, SNS利用に関わるユーザのリスク認知, ステレオタイプ的認知, トラブル実態などの一端が明らかとなった。なお, これらの調査結果については平成29年度に日本心理学会第81回全国大会等で発表予定である。また, ステレオタイプについては, その特性や測定法に関する基礎的研究を蓄積し, 論文等の成果として公表した。 その他, SNS利用リスクの教育手法開発に向けての準備にも取り組んだ。具体的には, 中学生・高校生を対象としたリスク教育を実践する上でピアエデュケーション効果が期待できる学生講師を研究分担者の所属機関内で養成するとともに, 講座の初案を作成した。また, 講座で使用するARS (audience response system) 装置を購入し, 講座内で使用できるように設定した。H29年度はこれら講座の実践と効果検証も行う予定である。 また研究代表者, 研究分担者ともに, SNS利用者間トラブルのメカニズムと密接に関わる集団行動や集合行動について先行研究を幅広く調査・整理した。その成果は学術図書にそれぞれ原稿執筆を行っている。このように, 当初の計画からみても順調に研究が推進されているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述のように, 研究開始後速やかに研究体制を構築し, 当研究の基礎となるステレオタイプや集団・集合行動についての文献調査や基礎研究を遂行しつつ, 研究課題に関連する調査を2件実施するなど, 当初の計画通りに調査を実施できている。さらに, 当初の計画では平成29年度の課題であったSNSリスクリテラシー講座に関する準備についても, 学生講師スタッフの募集を行い, 参画したスタッフとともに定期的なミーティング実施, 教材作成, データ分析を進めていることから, 当初の計画以上に順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき, 平成29年度は前年度に実施した調査結果を踏まえ, 楽観的認知の軽減に関わる教育心理学的要因を調査や実験により検討する. 具体的には, SNS安全利用に関する教材を作成するとともに, 教員や学生講師, 独学教材による学習がSNS利用リスクの認知に及ぼす影響を明らかにする。なお, 平成28年度に実施した高校生向け調査については, 比較のため高校生以外の対象者に再度実施し, 高校生に特有の楽観的認知があるかどうかを定量的に検討する。 また, 前年度までの調査結果について学会発表や論文投稿等を通じて成果を公表する。なお,成果発表のフィールドとしては, 日本心理学会, 日本社会心理学会, 日本教育心理学会, 日本教育工学会, 情報コミュニケーション学会など, 心理学や情報教育に関する領域を想定している。
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