研究課題
身体不満足感は、極端なダイエットや情動摂食など食行動の問題や喫煙など健康行動の背景要因とされている。青年期女子のダイエットの問題とされてきたが、近年は、その他の集団と課題が注目されている。例として、青年期および成人期男性の壮健願望と筋肉増強剤使用、肥満児の食行動、前思春期の子どものボディイメージとダイエット行動の関連である。自己の身体のとらえかたが、社会文化的な文脈でどのように規定され、健康関連行動に結びつくのか。また、日常生活で経験される感情が行動にどのように影響を与えるのか。蓄積された従来の研究を手がかりに、系統的・包括的な解明を進める必要がある。日常生活のなかで行動・経験・心理状態を測定する方法に、携帯端末をもちいたEMAによる測定がある。従来の自己報告式質問紙法を用いてとらえられてきた健康行動についても、生態学的妥当性を備えた方法でその関連を再検証することは、実生活における健康行動の形成要因理解において、意義あることと考えられる。本研究により、従来の方法論で得られた知見を拡張し国内外への発信が期待でき、まだ発展途上のEMAの精錬をとおして、心理学研究の新しい方法論を提供できるものと考えられる。本研究の目的は、従来の質問紙調査法による研究方法の限界をふまえ、生態学的妥当性を備えた測定方法を用いて、以下の3点を明らかにすることにある: 1)感情、認知、ボディイメージ、健康関連行動の関連性, 2)対人的相互作用、社会文化的要因のとりこみがボディイメージに与える影響の過程, 3)生態学的妥当性を備えた、身体不満足改善のための介入方法の検討。2017年度は、2016年度に実施した予備調査の結果の分析、EMAを用いた調査計画の見直しと実施、2016-2017までの研究成果の発信を計画した。日内で、大学生女子の身体不満足が高まる、時間帯、場所、きっかけが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
2017年度は、2016年度に行った予備調査の解析・調査設計の精緻化・予備的分析、2016-2017の予備的な研究成果の発信を行うことができた。EMAを用いるにあたり、調査てつづき、データ収集、携帯端末管理、分析方法に習熟する必要がある。2017年度は、分析に必要なintensive longitudinal analysisのワークショップへの参加を通して、分析方法の習得に努めた。EMAを用いた実査を行い、64名からのデータを収集することができた。また、予備調査の見直しにより、調査に対するコンプライアンス率を高めることに成功した。より緻密な分析をするにあたり、必要な統計パッケージと分析方法の両方についての専門性や、調査デザインに見合うサンプルサイズのシミュレーションの必要性があり、分析については海外の専門家のコンサルテーションを受けることとした。一部、予算の繰越を行うことで、より緻密な研究が可能になり、投稿にむけた準備が進められるにいたった。
研究成果の学会発表を進めるとともに、投稿準備を行っている。2017年度に収集したデータについて、マルチレベル分析のひとつであるintensive longitudinal data analysisを用いて、身体不満足度に及ぼす個人内/個人間要因を明らかにする。今回の結果を発展させ、大学生女子以外の集団を対象とした調査、健康行動に影響を与える要因をさらに探索すべく、新規調査を準備する。
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ヒューマンインタフェース学会論文誌
巻: 19 ページ: 163-174
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