研究課題
不安やうつなどの精神症状は,日常生活に支障をもたらす状態であり,これらの背後にあるメカニズムの解明に当たっては,スペクトラム的な視点も重要であることが明らかにされている.昨年度まで,これらの症状と関連の深い思考の時間的方向性に着目した研究を実施してきた.まず,fMRIを用いた未来性思考に関する研究では,現在から想像する時間枠を近い将来,遠い将来,近い過去,遠い過去の4条件で比較した結果,遠い過去条件において,前頭極の活動が特異的に観察されることが示されたが,今年度はこれを疾患レベルの症例を対象に実施した.その結果,健常者と同様,疾患レベルにおいても,この部位が重要な役割を担っていることが明らかになり,さらにどのような部位と機能的なネットワークを形成しているかについても,重要な事実が明らかになった.この成果については,国際学会でも発表し,論文化への準備も順調に進んでいる.次に,セイリエンスネットワークの機能については,島を対象とした内受容感覚の研究を実施し,島内のどの部位が内受容感覚や自律神経活動の制御と関わっているかを明らかにすることができた.島の構造的変化については,加齢に伴う変化を調べる研究も進んでいる.また,前頭極と関連の深い頭頂葉内側部の部位に関する高次認知機能に関するfMRIを用いた検討も進んでいる.さらに,不安やうつの背景にある悲しみ感情と関連の深い涙に関する研究も,実験が順調に進められた.神経内科的なアプローチによる研究についても,頭痛のタイプと自律神経活動指標である皮膚血流の関係を調べる研究を進めており,こちらも徐々に結果の傾向性が明らかにされつつある.次年度もこれらの研究を継続して進める予定である.
2: おおむね順調に進展している
一昨年度には遅延が生じていたが,昨年度の後半にその遅れは完全に取り戻され,現在は計画通りに推移している.
今年度も複数の研究計画を同時並行で進め,最終的な成果報告に際して,統一的な理論の提案ができるように迅速に進める予定である.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
Brain Research
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