研究課題
我々は日常生活において,ふと過去のことを想起したら,未来のことについて考えたりする.この機能には性格傾向が関わっていることが示されており,不安やうつなどが顕著な場合,過去ないしは未来に対する過剰な思考が背景にある場合が多い.本研究では,この点に着目し,さまざまなアプローチによる検討を行った.最終年度では,未来・過去思考性の過多と身体症状がいかに関連しているかを調べるために4つの実験を行った.一つはfMRIを用いた未来性思考に関する実験的検討である.うつ病患者を対象に,現在から想像する時間枠を近い将来,遠い将来,近い過去,遠い過去の4条件で比較した結果,遠い過去条件において,前頭極の活動が特異的に観察されることが示され,さらにうつ病においては前頭極と下部頭頂領域とのコネクティビティの異常性があることが示された.2つ目の研究は,これを脳波で検証した実験であり,今年度は心拍誘発電位に関する分析を進めた.心拍誘発電位は身体からの求心系信号を脳波で検出する指標であり,この電位が未来思考における感情価と深い関連のあることが明らかになった.3つ目の研究は,潜在連合テストを用いた研究である.このテストでは,未来とネガティブ感情,過去とネガティブ感情などの連合が潜在的なレベルで,どの程度形成されているかを調べることができる.結果として,不安傾向の一部の要素では「過去-ネガティブ」という概念的連合を有していることが示された.そして,4つ目の研究として,身体の感覚として本研究で着目した内受容感覚と自律神経の関連について調べるため,内受容感覚と頭痛の関連性について検討した.その結果,頭痛患者では痛みが強いほど内受容感覚の正確さは低下しており,慢性頭痛患者における内受容感覚の変容が示唆された.全体を通して,未来思考性と不安やうつなどの精神疾患傾向には,身体機能が深く関与していることが示唆された.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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