研究課題/領域番号 |
16H03741
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
坂本 真士 日本大学, 文理学部, 教授 (20316912)
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研究分担者 |
加藤 隆弘 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 特任准教授 (70546465)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抑うつ / ストレス / 社会系心理学 / 精神医学 / 心理的障害 / 新型うつ / バイオマーカー / 学際研究 |
研究実績の概要 |
本研究では、心理学と精神医学の双方から「新型うつ」の発症メカニズムを明らかにし、予防や治療に役立てる。心理学からは、「新型うつ」のパーソナリティ研究を発展させるとともに、対人的・社会的研究を行い、発症メカニズムを明らかにする。精神医学からは、パーソナリティ特性と生物学的要因との関連を検討する。 心理学的研究では28年度、5つの課題を設定した。課題1では、関連する特性である対人過敏傾向・自己優先志向に関して学生約600名を対象に質問紙法による縦断研究を行った。課題2では、大学生134名及び社会人280名を対象とし、動画によりストレス状況(叱責される場面)を提示し、その状況の認知を調べ、対人過敏傾向・自己優先志向との関連を検討した。課題3では、大学生115名を対象とし、経験サンプリング法により経験しているストレスフルな状況の有無やその内容を調査し、性格特性との関連を検討した。課題4では、医療関係者148名と会社員453名を対象とし、新型及び従来型抑うつのケースを提示、それらに対する認知を調べ比較するとともに、性格特性との関連を検討した。課題5では、「新型うつ」に関する新聞記事をデータベースより検索し、内容を分析した(114件)。いずれも現在データ分析中であり、本年度中の学会発表および論文投稿を目指している。 精神医学的研究では2つの課題を設定した。ひとつは、臨床現場で「新型うつ」の可能性がある患者を対象にし、末梢血の採血により血しょう・血清成分の中で、主に、炎症系・代謝系・ホルモン系などに注目した血液バイオマーカーを検索し、性格素因との関連を検討した。これまでのところ、代謝系の物質を測定し、予備的な興味深い物質を見出している。並行して、研究代表者が指揮する心理学的研究の調査を、患者を対象とし実施するための準備を整えることができた。今年度以降に臨床データを蓄積する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は4ヵ年計画であるが、「研究実績の概要」で述べたとおり、1年目を終えて研究は概ね順調に進んでいると言える。1年目は「新型うつ」に関する性格特性、対人的・社会的特徴、生物学的基盤を調べるなどの基礎的な研究を行ってきた。心理学的研究では、研究はほぼ予定通りに実施され、現在データ分析をしているところである。精神医学的研究では、現在もデータを集めているところであるが、患者のサンプルが集まりにくいことは当初から想定されていたことであり、研究計画通りの進捗と言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、「新型うつ」に関する基礎的な研究成果を踏まえて、予防や介入に関する素案を立案、実行することを意図している。幸い、28年度の研究は順調に進んでいる。そのため、29年度前半は、必要に応じて基礎的な研究を続けながら、28年度に実施した研究成果を分析、発表することを重視する。なお、「研究実績の概要」に示した課題4については、日米の大学生を対象に新たに研究を進める。これは、「新型うつ」の発生や認知に、文化的な要因が関係している可能性を吟味するためのものである。 29年度後半には、実践的な研究として、「新型うつ」的な行動をする社員や、「新型うつ」と関連する性格特性である対人過敏傾向・自己優先志向を有する社員でも、職場で力を発揮できるような環境は何かを調べる。人事やメンタルヘルスの部署を担当する会社員を対象とし、グループ・インタビュー調査を実施し、上記のようなポイントについて聞き取りを行う。また、新型及び従来型の抑うつに対して、どのような情報を啓発のために提供すべきかについて検討する。 精神医学的研究に関しては平成28年度の成果を基にして、引き続き、臨床でのデータの蓄積を行っていく予定である。 本研究課題は、複数の研究から成り立っていること、それぞれの研究成果を持ち寄って予防や治療への活用を目指すことから、研究組織のメンバ間で頻回にミーティングを実施し、研究成果の共有を図る。
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